再び訪れた家族の提案
そんなある日、両親と妹夫婦が突然オフィスを訪ねてきました。
「この建物、立地もいいし、民泊にしたらどうだ?」
突然の提案に、私は「ここは保護動物のための施設です。用途を変える予定はありません」と静かに答えました。A子さんも「この施設は動物福祉を目的に設計されています。宿泊事業とは前提が異なります」と補足してくれました。明確に線を引いたことで、家族はそれ以上強くは言いませんでした。
さらに後日、実家リフォームの費用負担について確認の連絡がありました。当初の取り決めでは、施設用途で使用する前提で私が一部費用を負担していました。しかし実際には住居として使用されているため、当初の取り決めに基づき、私が負担していたリフォーム費用の精算を求めました。
どこか不満そうな家族を前に、私は感情ではなく契約内容を確認しながら、「事業利用が前提で費用を負担しました。用途が変更になるのであれば、費用も取り決め通りに整理する必要があります。事業と家族の問題は分けて考えましょう」と伝えました。
話し合いの結果、私が負担していたリフォーム費用は両親側が返金することで合意。書面でも確認を取り、正式に精算が完了しました。ここで改めて、「家族であっても、約束と責任は明確にするべきだ」と思ったのです。
支え合える仲間という存在
現在、事業は順調に拡大し、受け入れる動物も増えています。
ある日、A子さんが「少しずつ規模が大きくなっていますね。でも、この仕組みがあるから現場は安定しています」と言いました。
私は「システムだけでは足りない。現場を守るのは人だよ」と答えました。
A子さんはうなずき、スタッフと連携を強めてくれています。恋愛感情ではなく、プロフェッショナルとしての信頼。
それこそが、今の私にとって何より心強いものです。
まとめ
実家での計画は頓挫しましたが、その経験があったからこそ、自社拠点という選択ができました。家族との距離は以前よりも広がりました。しかしその代わりに、理念を共有できる仲間との結束は強まりました。あのとき感情に流されず、冷静に線を引いた自分の判断は間違っていなかったと胸を張って言える今、私はようやく本当の意味で「自立した経営者」になれたのだと感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








