
私の実家には、家族で出かけるという習慣がほとんどありませんでした。それは偶然ではなく、母の性格によるものでした。大人になり、父の退職祝いをきっかけに、私はずっと心の奥に押し込めていた感情と向き合うことになりました。
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出かけない母が当たり前
母は社会人1年目を終えてすぐに結婚し、それ以来ずっと専業主婦でした。父は公務員で、実家は男尊女卑的な空気が色濃く残る、閉鎖的な田舎の家庭でした。
母はとにかく外に出たがらない人でした。遠い、面倒、疲れる。理由はいつも同じ。住んでいる地域から離れることを、必要以上に嫌がっていたのです。
小さいころ、家族みんなでどこかへ出かけた記憶はほとんどありません。それが寂しいと感じる前に、「うちはこういう家なんだ」と諦める癖が、いつの間にか身についていました。
消えた父の退職祝い
結婚後、父の退職祝いに家族旅行をしようと私から提案しました。父は珍しくうれしそうな顔をして、「行こうか」と言ってくれました。
けれど母は首を縦に振りませんでした。「遠い、知らない土地は嫌、今さら行かなくてもいい」。次から次へと理由を並べる姿に、私は強い虚しさを感じました。
私は母にこれは父のためのお祝いだと、何日もかけて説得しました。それでも母は動きませんでした。父も結局、「お母さんがそう言うなら」と引き下がり、旅行の話はなかったことになりました。
その瞬間、私は子どものころから何ひとつ変わっていない現実を、突き付けられた気がしました。








