
母は白髪を染めない人でした。少なくとも私の中では、ずっとそのままでいる人だと思っていました。ところが、あることをきっかけに、母の初めての選択を見守る時間が始まったのです。
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白髪を染めなかった母
私の祖母も母も「白髪染め」をしていませんでした。白髪が少なかったわけではありません。それでも「年を重ねたら白髪になるのは自然なことだ」という考えが、2人の中にあったのだと思います。
その代わり、髪は短めに整え、定期的に美容院へ行っていました。祖母も母も、「みすぼらしくならないようにね」と、そんなことをよく口にしていた記憶があります。
60代にして挙式をすることに
母は私が成人してから父と離婚しました。その後、祖父が亡くなり、母は祖母と、そして猫2匹と一緒に暮らしていました。実家は昔ながらの田舎の家で、近所の方や友人がしょっちゅう出入りしていました。だから当時の私は「母はきっと大丈夫だろう」と、どこかで安心していました。
祖母が晩年を迎えたころのことです。家に来ていた方の1人が、突然「お母さんと結婚したい」と申し出ました。あまりにも唐突で、母は驚き、祖母は声を出して笑っていました。
その後まもなく祖母は亡くなってしまうのですが、祖母は生前、母に「私が死んだら、あんたはひとりぼっちになってしまうよ」と言っていたそうです。その言葉に背中を押されたのか、母は60代にして、いわゆる「交際0日婚」という形で再婚を決めました。
そして、一般的に想像するような大きな式ではなく、小さくささやかな結婚式を挙げることになりました。そこで母は、人生で初めて「白髪染め」をすることになったのです。
飼い猫への愛が詰まったアイデア
「自然派」の母が白髪染めをすると、どんな雰囲気になるのだろう。私は少し緊張しながら、母からの報告を待っていました。
届いたメールには「猫とおそろい!」という一文と、写真が添付されていました。白髪と黒い部分はそのまま生かしつつ、ところどころに茶色のメッシュが入っています。色合いも、色の比率も、家で飼っている三毛猫を思わせました。
普段から猫を大事にしている母らしい発想で、画面を見ながら思わず口元が緩みました。
式場に猫を連れて行くことはできません。それでも母は、「髪に気持ちを載せたから、猫も参加したみたいなもの」と言いました。再婚という節目を、母は母なりに大事にしているのだと、そのとき感じました。
まとめ
白髪を染めることは、母にとって単なる「若返り」の手段ではありませんでした。それは、最愛の猫や新しい家族という「自分が大切にしているもの」に対し、敬意を払って自らを整えるという、母なりの誠実な向き合い方だったのだと思います。
変化を拒むのではなく、自分らしい理由を見つけて柔軟に受け入れる。母の三毛猫色の髪は、年齢や世間の価値観に縛られず、自分の心が納得する美しさを選ぶ大切さを、私に教えてくれました。
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著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
イラスト/マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)








