思わぬところからの救いの手
大量の魚を前に、どうすべきか途方に暮れていたそのときです。向かいの寿司店の女将さんが、声をかけてくださいました。事情を聞いた上で魚を見て、「本当にいい魚ね」と、すべてを当初の金額で買い取ってくれたのです。胸がいっぱいになり、思わず涙が出そうになりました。
その後、例の高級寿司店では別の問題が起きていたようです。撮影に訪れたインフルエンサーが、提供された魚の質に違和感を覚え、問い合わせをしてきたのです。
私は、これまでのやりとりがわかる範囲で事実を説明しました。結果として、インフルエンサーは女将さんの寿司店を訪れ、その味と鮮度を高く評価する投稿をおこないました。向かいの寿司店は評判を呼び、連日満席に。一方で、新大将の店からは、少しずつ客足が遠のいていったと聞いています。
後日、新大将から「以前の条件で取引を再開したい」と連絡がありました。しかし、これまでの一連の出来事を思うと、これ以上関係を続けることはできませんでした。先代との縁は大切な思い出ですが、商売は信頼あってこそ。私たちは取引をきっぱりと終える決断をしました。
現在は、あのとき助けてくれた寿司店と正式に契約し、良い関係を築いています。
--------------
長年の取引先であっても、世代交代や姿勢の変化によって関係が崩れることはあります。商売において大切なのは、価格や規模以上に「誠実さ」と「信頼」。真摯な姿勢は、巡り巡って必ず評価されるということを実感させられるエピソードですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








