出勤すると消えていた私の机と私物
ある日出勤すると、ナースステーションに置いていた私の個人用レターケースが空になっていました。さらに、更衣室のロッカーを開けると、私物がすべて大きなゴミ袋にまとめられていたのです。「どういうこと……?」とぼうぜんとしていると、看護師長が平然とひと言。
「まだいたの? もう辞めると思って、ロッカーも空けさせたわ。次の人の準備があるから。あなたの物はまとめておいたから」
さらに看護師長は、「彼氏いるでしょ? どうせ寿退職するなら、この職場に私物なんて置いておく必要ないでしょ」と、根拠のない決めつけまで口にしたのです……。あまりの身勝手さに、私はついに我慢できなくなりました。職場の雰囲気を壊したくないと思ってきましたが、それ以上に見過ごせない一線を越えていたからです。
「いいかげんにしてください。業務と関係のない発言に加えて、私物を無断で処分するのは問題です。上司や人事に相談します」
しかし看護師長は、「新人と看護師長、どちらの話が信じられると思う?」と、まったく動じる様子はありませんでした。
その場に現れた、思いがけない人物
そのとき、騒ぎを聞きつけてやって来たのは、検診で来院していた私の祖父母でした。
「どうしたの? 待合室まで声が聞こえてきたわよ」
患者さんにも迷惑をかけてしまったことを申し訳なく思い、私は事情を説明した上で、「責任を取って退職します」と伝えました。すると看護師長は、祖父母の顔を見た瞬間、言葉を失ったのです。
実は祖父母は、この地域で複数の医療機関を運営する法人の関係者でした。私は実力で働きたかったため、職場ではあえて血縁関係を伏せていたのです。
私の話を静かに聞いた祖父は、「最近、職場環境について複数の報告が上がっていた。調査を進める必要があるね」と落ち着いて答えました。
調査の結果、明らかになった問題行為
後日、院内で事実確認と聞き取りがおこなわれ、看護師長の言動について正式な調査が実施されました。その結果、部下への不適切な言動や業務上不相当な対応が認められ、一定期間の謹慎と役職変更が決定。最終的に、看護師長は自ら退職することとなりました。
新しく就任した看護師長は、穏やかで指導力のあるベテランの方。職場の雰囲気は大きく改善し、先輩方からも「声を上げてくれてありがとう」と言われました。
私自身、祖父母の立場があったからこそ守られた部分もあると思います。それでも、理不尽な状況に対して勇気を出して行動することの大切さを、身をもって学びました。これからは看護師として、初心を忘れずに精進していきたいと思います。
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立場のある人ほど、慎重な言動が求められますよね。今回は調査をきっかけに職場環境が見直され、結果的に改善につながりました。退職覚悟で声を上げた行動は、決して無駄ではなかったと言えるのではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








