新しい縁と、小さな希望
数カ月後、私たちの生活は少しずつ落ち着きを取り戻しました。そんなとき、公園で娘が出会ったのが、地域で保護猫活動を続けているA山さんという60代の男性でした。地域に詳しく、誰にでも分け隔てなく接するその人柄に、私も自然と心を許すようになりました。
ある日、周辺一帯が再開発される計画があることを教えてもらい、「この家を生かせないか」と考えるようになった私。紹介してもらった地元の職人さんたちの力を借り、実家を生かした古民家ネコカフェを開くことになりました。
保護猫と触れ合える場所として評判を呼び、少しずつ常連さんも増えていきました。娘も自然と活動に関わるようになり、笑顔が戻っていったのです。
再び現れた元夫
数年後。カフェで過ごしていると突然、「久しぶりだな。元気そうじゃないか」と元夫が現れました。
娘は一歩引いた位置から、無言で様子を見ていました。ギャンブルに手を出し、経済的に苦しい状況にあることをほのめかしてきた元夫が、助けを求めてきました。その場に居合わせたA山さんは、元夫の口ぶりが、どこかこちらの弱さにつけ込むように聞こえたのか、少し間を置いて静かに口を開きました。
「専門家に相談してみてはどうでしょう。事実関係を整理すれば、選択肢が見えることもあります」
私はその助言を受け、第三者の立場からこれまでの経緯を整理してもらうことにしました。当時、相続の話がどのように進められていたのか。私自身がどこまで理解し、どんな判断をしていたのか。感情を切り離し、事実として振り返る必要があったのです。
専門家のサポートを受けながら話し合いを重ねた結果、不明確だった点が一つずつ明らかになり、金銭面についても区切りをつけることができました。私にとってそれは、「取り戻す」ためではなく、前を向くための整理でした。
娘は「もう大丈夫」と、はっきり言いました。私も、過去に縛られるより、今ある暮らしを大切にしようと思えました。支えてくれる人がいる場所で、娘とともに歩んでいく。それが、私たちの選んだ未来です。
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信頼していた相手に裏切られ、すべてを失ったように感じた母娘。しかし、周囲の支えと冷静な判断によって、新しい道を切り開くことができました。困難なときほど、信頼できる第三者の存在が、人生を守る力になるのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。








