“星”というテーマを自分の中で決めた作品
――2編目の「銀紙色のアンタレス」は16歳の少年が主人公で、夏の終わりの寂しさや青春のはかなさがじんわりと伝わってきます。この物語は小説誌『オール讀物』2015年8月号の掲載と、少し前に書かれた作品です。
窪さん 『オール讀物』の1000号記念の号に掲載される作品のご依頼がありまして、発売時期が夏だったんですね。そこで、夏にまつわる少年の話を書こうと思ったんです。私が今まで書いてきたような性的な内容は一切省いて、ごく普通の夏の少年を書こう、と思いました。
――“アンタレス”は夏の星の名前です。
窪さん 夏を代表するアイテムに何があるだろうと考える中で、夏の大三角などのアイデアが出てきまして、星をモチーフにすることにしました。それ以来、「『オール讀物』さんからご依頼をいただいた原稿には、全部、星を絡めて書こう」と自分の中で決めたんです。
――少年が夏休みを一緒に過ごす“ばあちゃん”との場面には、思わず懐かしさを覚えてしまいます。
窪さん 私自身、おばあちゃんに育てられたようなところがありますし、すごくおばあちゃん子なんですね。だから、私の作品にはよくおばあちゃんが登場しますし、おばあちゃんのことは悪く書かないという傾向があるような気がしています。
――3編目の「真珠星スピカ」は、いじめに遭う少女と亡くなった母親との不思議な同居生活を描いたお話です。
窪さん 中学生の女の子を主人公にしようと考えたときに、いじめのことは書いておきたいと思ったんです。でも、生々しいいじめのシーンを描くのではなく、ファンタジーにくるんだ形で書きたかったんですね。そこで、お母さんの幽霊を登場させることにしました。
――中学生の女の子たちが「こっくりさん」をする場面にも、ある種の懐かしさを感じます。
窪さん この作品が掲載されたのは『オール讀物』の怪奇特集の号なんです。当時、たまたまこっくりさんに関する本を読んでいたこともあり、小説に取り入れることにしました。こっくりさんは私が十代のころに流行りましたが、今でも興味深いんですよね。
<窪美澄さんプロフィール>
1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。その他に『さよなら、ニルヴァーナ』、『よるのふくらみ』、『やめるときも、すこやかなるときも』、『じっと手を見る』、『私は女になりたい』、『朔が満ちる』など著書多数。
<著書>

『夜に星を放つ』窪美澄著/文藝春秋 1400円+税








