
私は現在、都内のおもちゃメーカーで営業職として働いています。主に保育園や幼稚園向けの知育玩具を提案する仕事で、外回りが中心です。ある日の午後、営業先へ向かう途中、道端で泣いている小さな女の子に出会いました。
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外回り営業の途中で出会った迷子の女の子
「ここ、どこ……?」と不安そうにそうつぶやくその子は、C美ちゃんという名前で、どうやら道に迷ってしまったようでした。周囲に保護者らしき姿はありません。
私はまず近くの店舗に声をかけて事情を共有し、念のため人目のある場所で落ち着かせた上で、最寄りの交番へ向かいました。移動中、営業バッグに入っていた自社の試作品を渡すと、C美ちゃんは少しずつ笑顔を取り戻してくれました。
交番で事情を説明していると、慌てた様子の保護者の方が到着。無事に引き渡すことができました。
「本当にありがとうございました。後日きちんとお礼をさせてください」
そう言われ、名刺をお渡しして私はその場を後にしました。
思わぬ再会と突然の取引方針変更
数日後。私は以前から取引のある、全国規模で保育施設を運営している法人へ打ち合わせに伺いました。対応してくださった代表のA子さんから、開口一番「先日は娘がお世話になりました」と言われたのです。
なんと、あのC美ちゃんはA子代表の娘さんだったのです。驚く私に、さらに思いがけない言葉が続きました。
「現在進めている海外製玩具の契約ですが、白紙にさせてください。一度見直したいと考えています」
私は一瞬、言葉を失いました。これまで順調に進んでいた商談だったからです。A子代表は「先日いただいた試作品のような、国内生産で安全性や温かみを大切にしたおもちゃを、ぜひ取り入れたいのです。実際に娘がとても気に入っていました」と続けました。
社に戻り報告すると、上司のB田部長は慎重な姿勢を示しました。海外製品は仕入れコストが低く、利益率が高いという事情があります。急な方向転換はリスクにもなりかねません。しかし私は、現場の声を重視したいと考えました。
「まずは首都圏の施設のみで導入し、効果を検証するのはどうでしょうか」
段階的な導入であれば、リスクを抑えながら判断できます。A子代表もこの案に賛同してくださいました。最終的に部長も了承。私は、この挑戦を必ず成功させようと決意しました。








