
私たち夫婦は、夫の実家を継いだ小さな鮮魚店を営んでいます。苦労は多いものの、品質には自信があり、店も少しずつ軌道に乗ってきました。中でも、10年以上取引を続けてきた老舗の高級寿司店とは、信頼関係のある大切な取引先でした。ところが、先代の大将が引退し、息子夫婦へと代替わりしたことで、状況は一変したのです。
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やさしかった先代とは正反対の新大将
ある日、いつも通り魚を納品に訪れたときのことです。店の奥から聞こえてきたのは、「うるっせぇな!」という荒い声。新しく大将になった息子さんのものでした。
穏やかで物腰の柔らかかった先代とはまるで別人。その後も、伝票を渡すたびに威圧的な態度を取られ、内心では不安を覚えつつも、「これまで通りよろしく頼む」と言ってくれた先代の言葉を思い出し、なんとか関係を続けようとしていました。
世代交代からしばらくして、新大将から一本の電話がかかってきました。
「店を移転したから、次からは新店舗に持って来い」
事前に何の連絡もなかったことに驚きつつ、指定された住所へ向かうと、そこはすでに別の寿司店が向かいにある場所。正直、立地としてはかなり厳しそうに見えました。
それでも新大将は、「あんな店、うちの相手じゃない」と強気な態度。根拠はわかりませんが、不安はますます募っていきました。
値段に対する執拗なクレーム
代替わり後、初めての本格的な納品日。夫が別件で手が離せず、私ひとりで向かうと、新大将から開口一番こう言われました。
「スーパーならこの半額……いや、もっと安く買えるだろ」
事実とはかけ離れた言い分でしたが、どうやら奥さんの意見も強く影響している様子。その日以降、価格に関する無理な要求やクレームが毎回のように続くようになりました。
そんな中、新大将から大きな注文が入ります。若者に人気のインフルエンサーが店を紹介する動画を撮影するため、100万円分の魚を用意してほしいという内容でした。
正式に契約書を交わし、こちらも漁師さんに事情を説明して、特別に魚を分けてもらう段取りを整えました。
ところが、納品当日。店に着くなり、「その魚はいらない。返品してくれ」と言われたのです。事情を説明し、契約内容を確認しても話は平行線。最終的には、「1万円で買い取る。それが嫌なら今後の取引はなし」と、一方的な条件を突きつけられました。
到底受け入れられる内容ではありません。私はその場で、今後の取引を続けられないことを伝え、交渉は終わりました。








