
料理人の私は、食べることも作ることも大好きで、料理学校を卒業後、ホテルのレストランに就職しました。1年前に結婚した同い年の夫も料理人で、同じ現場で腕を磨いてきました。夫の実家は、地元で小さなレストランを営んでいます。しかし、近年は経営が厳しい様子。夫婦で話し合った末、私たちは勤めていた職場を辞め、義実家の店を手伝う決断をしました。
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客足の途絶えた店と、報われない努力
私たちが加わった義実家のレストランは、近隣にファミレスやチェーン店が増えた影響もあり、客足が大きく減っていました。
「立地が悪いのかな……」と夫が肩を落とす一方、私は「何か変えなきゃ」と、写真付きの看板を作ったり、SNSで情報発信を始めたりと、できることを必死に試しました。ですが、効果は一時的で、赤字はなかなか改善しません。
そんな中、義兄一家は頻繁に来店しては、「今日もヒマそうだな」「相変わらずガラガラね」と笑いながら、代金も払わず帰っていきます。
夫が「食べた分は払ってほしい」と伝えても、「家族なんだからいいだろ」と取り合ってもらえません。義両親も義兄には強く言えず、その様子を見て、私は言葉にならない悔しさを感じていました。
兄のひと言が灯した、小さな希望
そんなある日、今度は私の実兄が店を訪れてくれました。兄はきちんと代金を支払い、夫がサービスで出した私の手作りプリンについても、「身内だからといって、当然のように無料ではもらえないよ」と丁寧に断りました。
そして帰り際、「お金を払ってでも食べたい味だよ。特にプリンは本当においしい」と言ってくれたのです。その言葉に、胸がじんわりと熱くなりました。
それをきっかけに、夫が「このプリンを改良して、店の看板メニューにしよう」と提案。私たちは「この店にしかないものを作ろう」と覚悟を決め、試作と改良を重ねていきました。
義両親が細かく口出ししなかったこともあり、私たちは比較的自由に挑戦することができました。試行錯誤の末、ココナツミルクを使った、軽やかで食後にも合うプリンが完成。少しずつ評判が広がり、客足も徐々に戻っていったのです。
「プリンを目当てに来ました」と言われる日が増えたとき、これまでの苦労が報われた気がしました。








