
家族経営の小さな町工場で、事務兼営業を担当している私。事務用品向けの精密部品を製造する零細企業ですが、家業を守り、発展させるために日々奔走しています。この日は、長く交渉を重ねてきた大手企業の社長と、初めて直接お会いする日。取引が実現すれば、当社にとって大きな転機となります。緊張しながらも、これまで準備してきた資料を手に訪問すると……。
★関連記事:「息子は渡さない」夫の死後に態度急変…義両親の思惑を跳ね返した母の決断
社長とは対照的な“違和感”
先方に到着すると、社長自らが出迎えてくださいました。とても謙虚で、下請けである私にも丁寧に接してくださる姿勢に、ほっと胸をなで下ろしました。ところが、応接室へ案内してくれた女性秘書の態度に、強い違和感を覚えたのです。
彼女は、社長には聞こえない声で「下請けなんですから、あまり出過ぎたことはなさらないでくださいね」と私に言ってきたのです。私は耳を疑いました。応接室へ向かう廊下でも、彼女は終始冷ややかな表情のまま。歓迎されていない空気をひしひしと感じました。
それでも、この日は大切な商談。私は気持ちを切り替え、社長との話し合いに集中しました。
契約内定後の思わぬひと言
結果商談は無事にまとまり、数日後に正式契約を結ぶことが決まりました。肩の力が抜けた帰り際、私は改めて秘書に「このたびはありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」とあいさつをしました。
しかし返ってきたのは、想像もしない言葉でした。
「作業服で営業ですか? もう少し立場をわきまえたほうがいいのでは?」
私はその日、契約後に社長を工場へご案内して実際の設備をご覧いただく予定があったため、作業服を着ていました。事情を説明しましたが、秘書の表情は変わりません。「御社のような規模の会社は、あくまで下請けという立場ですから」という言い方に、悔しさを覚えました。








