
海外出張から帰国した日のことです。空港には、会社で営業アシスタントをしているA子さんが迎えに来てくれていました。夜も遅かったのですが、父から「取引先のC社の社長が急ぎで来ているから一度顔を出してほしい」と連絡があり、そのままA子さんと実家へ向かうことになりました。
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帰国直後に知った思いがけない展開
実家に着くと、応接間には弟と女性の姿がありました。その女性は、私が最近知り合ったばかりのB美さんでした。
B美さんは、父の取引先であるC社の役員の娘さんです。数カ月前、父が仕事関係の食事会で紹介してくれたことがきっかけで知り合いました。
まだ正式に交際していたわけではありませんが、互いに好印象を持ち、これからゆっくり関係を築いていければと思っていたところでした。そんな矢先の海外出張だったのです。
ところがその場で、思いがけない話を聞くことになりました。
弟からの突然の報告
応接間に入ると、弟が平然と「兄さん、ごめんな」と口を開きました。そしてB美さんも、示し合わせた様子で言いました。
「実はこの前から、弟さんと何度か会う機会があって……。これからは弟さんとお付き合いしていこうと思っています」
一瞬、言葉が出ませんでした。弟は昔から、私の持っているものに興味を持つことが多い性格でしたが、まさかこんな形になるとは思っていませんでした。ただ、まだ正式な交際をしていたわけでもありません。私は気持ちを整理しながら、静かに「そうなんですね。お互いに納得しているなら、それが一番だと思います」と答えました。
すると弟は、どこか安心したような顔をしていました。B美さんはその場で、「これからは、父の会社との仕事も弟さんと連携して進めていけたらと思っています」という話もしました。
これまでC社との取引は、主に私が担当していました。父としても、家族同士の関係が深まるなら弟が窓口になるのも自然だと考えたのでしょう。母も賛成していて「弟に任せなさい」と言うので、現実を冷静に受け止めました。
「わかりました。それなら今後は弟に引き継ぎます」
その場には、空港から同行してくれていたA子さんもいました。巻き込んでしまったことを申し訳なく思いながらも、私は静かに役目を手放すことにしたのです。








