
私は、工場機器メーカーの営業部で働いています。ある日、社内で「部長の娘が新入社員として配属されるらしい」というウワサが広まりました。
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職場に広がったウワサ
朝礼前のフロアでは、同僚たちがその話題で持ちきりです。B田が「どうせコネ入社だろ?」と言うと、C山が「まあ本人の努力もあるんだろうけど、部長の娘なら入りやすいのかもな」と、どこか含みのある言い方をしました。
私は内心、少し疑問を感じていました。「本当かな。うちの会社の経営陣は、そんなことをするタイプじゃないと思うんだけど……」と思っていると、そこへ部長が現れました。
「今日は新入社員を紹介する」と言って案内された人物を見て、私は思わず驚きました。
「はじめまして! A子です。よろしくお願いします!」と元気いっぱいにあいさつしたA子さんは、派手めのメイクと明るい雰囲気が印象的な女性でした。部長は少し苦笑しながら言いました。
「皆、察していると思うが、私の娘だ。ただし、採用試験は通常通り受けている。結果も問題なかった。先入観を持たずに見てもらえるとありがたい」
場が少し和んだところで、朝礼は終了しました。しかし、その直後、「ちょっと社長室に来てくれないか」と私は突然呼び出されることになったのです。
社長室で告げられた「教育係」
社長室に入ると、部長と社長が待っていました。
「実は、A子の教育係をお願いしたい」と切り出され、私は少し驚きました。
部長に「採用試験の結果はよかったんだが、どうしても周囲に誤解が生まれやすい立場だからな。仕事で評価されるよう、しっかり育ててほしい」と言われ、私は少し考えましたが、「やっぱりそういう意図だったんだな」とすぐにうなずきました。部長が身内びいきをする人ではないことは、これまでの仕事ぶりからわかっていたからです。
オフィスに戻ると、C山がすぐ声をかけてきました。
「へえ、お前が教育係? 注目の新人担当なんて大変だな」と少し皮肉っぽい言い方でしたが、私は苦笑しながら「社長も同席していたよ。彼女も本気で仕事を覚えるつもりみたいだし、ちゃんとサポートしようと思う」と答えました。
するとA子さんも近づいてきて言いました。
「先輩のこと、父から聞いてます。困ったら相談しろって言われました。いろいろ言われてるみたいですけど……仕事で結果を出すしかないですよね」
その言葉には、思っていた以上の覚悟が感じられました。








