
私は妻と娘と3人で暮らしながら、小さなIT会社を経営しています。実家は地元の食品業界ではそれなりに知られた会社を営んでいましたが、5年前に経営は弟へ引き継ぎ、私は以前から挑戦したかったIT事業で独立しました。自分では前向きな決断のつもりでしたが、そのころから義実家の態度がどこかよそよそしくなったように感じていました。あからさまではないものの、距離を置かれているような、少し見下されているような空気を感じることが増えたのです。
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料亭で感じた違和感
違和感がはっきりした形で表れたのが、ある日の料亭での出来事です。その日は、妻、義父、義母、娘のA子、そして私の5人で、以前から懇意にしている料亭を訪れていました。
料理が順番に運ばれてくる中で、私の前だけは空いたまま。妻は気にする様子もなく「パパの料理だけまだみたいだけど、先に食べましょう。冷めちゃうし」と軽く言いました。続けて義父も「私は娘と孫が元気ならそれで十分だ。君は忙しいと思ったから料理は注文していない。料理は家族の分だけだ」と笑いながら言いました。
冗談めかして言ってはいるものの、義父が私を見下しているのは明らかです。そして助け舟を出すでもなく、義父と一緒に笑っている妻の冷たい態度にも違和感を覚えました。
すると、その場の空気を変えたのは娘のA子でした。
「ママ、知らないの? パパの料理が来ないのは、パパがいつも断ってるからだよ」
料亭の料理長が明かした、私の仕事
実は数年前、この店のシステムを私の会社で整備した縁があり、料理長からはいつも「特別なおもてなしを」と申し出をいただいていました。
しかし、家族との席で自分だけ目立つのは避けたかったため、事前に「今日はサービスは不要です。皆と同じ料理を出してください」とだけ伝えていたのです。
ところが、予約を仕切っていた義父が、あえて私の分だけ注文をしていなかったため、テーブルには私の皿だけがないという異様な状況になりました。私の「サービス不要」という言葉と、義父の「注文なし」が重なり、店側は混乱したのでしょう。
しかし、その様子を察した料理長が、私の顔を立てるために慌てて奥から現れたのでした。「お待ちしておりました。せっかくなら特別なお料理をご用意しましたのに、今日はご辞退されるとお聞きしまして……。お席の不手際、大変失礼いたしました」
義父と義母、そして妻は驚いた様子。料理長が、食品卸会社を経営する義父を差し置いて私にあいさつをしてきたことに違和感を抱いたようです。私は慌てて「いえいえ、とんでもない。今日は家族との食事なので大丈夫です」と再度お断りしたものの、事情は自然と義父たちに伝わってしまいました。
すると義父は「うちの会社を継ぐ人だと思って、君に娘を任せたんだがな」と不満げに言いました。義父の言葉に、妻もため息まじりに「正直に言うと、私もそう思っていたの。あなたが会社を継ぐ人だと思っていたから結婚したんだから」と続けたのです。
その言葉を聞いたとき、私はようやく妻とは結婚に求めているものが違っていたのだと気付きました。








