
私は小さな建築会社を経営する建築士です。住宅設計や店舗デザインを中心に地域密着で仕事をしてきました。しかし、大手デベロッパー勤めの弟は、昔からそんな私の仕事を見下しているようでした。そんなとき、弟が直属の上司であるC山部長の娘・B美さんとの結婚を機に、二世帯の新居を建てることに。その新築パーティーで、思いも寄らない出来事が起きたのです。
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新築祝いの席での冷たい言葉
当日は仕事帰りだったため、私は作業服のまま急いで弟の新居へ向かいました。見下されていても、仮にも弟。お祝いの品だけでも渡したいと思ったのです。
すると弟は、私を見るなり玄関先で「作業着のまま来たの? 新築が汚れるだろ」と冗談交じりの口調で言ったのです。さらにB美さんの母親まで、「今日は家族だけのお祝いなので」と、私を完全に部外者扱いしました。
私は苦笑しながらも、「この家の施工、うちの会社も関わっているんだけど……」と説明しましたが、誰も信じてくれません。弟はさらに挑発するように「兄さんに頼んだ覚えなんてないよ。大手の建設会社に依頼したんだから。もし自分が建てたって言うなら、解体してみろよ」と言いました。
私は少し考えたあと、こう答えました。
「本当にいいんだな? じゃあ、この書類にサインしてくれ」
弟は深く考えず、その場の勢いで「お前の会社のアフターケアや特別仕様は一切不要だ」という同意書にサインしたのです。
思わぬ形で証明された“本当の施工会社”
翌日、弟の新居に現れたのは、解体業者ではなく内装の撤去作業員でした。実は、その家のリビングに施された美しい意匠や、使い勝手を考え抜いた造作家具は、私の会社が「兄弟のよしみ」で、予算外の持ち出しで制作・設置したものだったのです。
弟が慌てて止めようとしたときには、すでに私の会社が所有権を持つ特注パーツの回収が始まっていました。
弟は慌てて施工会社の本社に抗議の電話をかけました。すると、電話口に出たのは私でした。実は少し前、私の経営する会社は大手建設会社と業務統合を行っており、私はその会社で技術部門の役員に就任していたのです。
弟は、自分が「見下していた小さな会社」が、実は自分の勤め先の重要なパートナーであり、自分の家を「特別なもの」にしていた正体だったと初めて知り、絶句していました。
結果として、新居を元の理想の形に戻すには、正式な「追加発注」として数百万円の費用と数ヶ月の工期が必要になりました。おまけに義父であるC山部長からも、身内への無礼が原因で会社に迷惑をかけたとして、厳しい叱責を受けたそうです。








