
会社員の私は2年前、夜の接客業に従事していたA子と結婚しました。彼女には小学生の娘・B美がいて、私は結婚と同時に父親という立場になりました。戸惑いながらも、少しずつ距離を縮めてきた私たち。そんな中、ついにB美の卒業式を迎えることになったのです。あの日、B美から思いがけない言葉をもらうことになるとは、まだ想像もしていませんでした。
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すれ違う「家族」のかたち
結婚前、A子は「家庭を優先する」と話していました。しかし結婚後も夜遅くまで働き、朝方に帰宅する生活は変わりませんでした。そんなある日、私は率直な気持ちを伝えました。
「家族で過ごす時間をもう少し増やせないだろうか。B美もこれから思春期に入るし、学校行事くらいは参加してほしい」
職業そのものを否定するつもりはありませんでした。ただ、家族としての約束を大切にしてほしかったのです。しかしA子は、「今が大事な時期なの。簡単に辞められる仕事じゃない」と反発しました。昼間は休みたいという理由で、学校行事への参加にも消極的でした。
私は、「B美は本当は母親に来てほしいはずだ。継父の俺では足りないのかもしれない」と不安を打ち明けましたが、A子の態度は変わりませんでした。
それでも私は、B美のためにできることを続けようと決めていました。
卒業式の朝
そして迎えた卒業式当日。私は早朝出社後に式へ向かう予定でしたが、B美から電話がありました。
「ママが起きない。お酒のにおいがする……」
胸がざわつきました。前夜、A子は「明日はちゃんと行く」と言っていたはずです。私は一度会社に事情を伝え、すぐに引き返しました。
家に着くと、B美はすでに制服に着替え、ランドセルを背負って玄関に立っていました。目は少し赤く、泣いたあとが伺えました。「ママ、無理そうだから……もういい」と言いながらも、どこか諦めきれない表情でした。
私は「大丈夫。俺が行く。一緒に行こう」と声をかけました。会場へ向かう道中、B美はほとんど話しませんでした。周りの同級生が両親と並んで歩く姿を、じっと見つめているのがわかり、私は胸が締めつけられる思いでした。
式が終わり、校門前で写真を撮った後、「卒業おめでとう」と声をかけた私。すると、しばらく黙っていたB美が、小さく「パパがいてくれたから、寂しくなかった。ありがとう、パパ」と、初めてそう呼んでくれました。
そのひと言は、無理に気持ちを切り替えた言葉ではありませんでした。迷い、期待し、少し傷ついた上で、自分なりに前を向こうとした結果の言葉だったのでしょう。私はその瞬間、父親としてここにいる意味を、初めて実感しました。








