
私は高校卒業後、地域の洋食店で働き始めました。現在は厨房で調理補助をしながら、注文を受けた弁当の配達も担当しています。料理人のB山さんからは「ただの配達担当だろ」と軽く扱われることもありましたが、いつか本格的な調理に携わりたいと思い、厨房で教わったことを一つずつ覚えていました。そんなある日、配達先での出来事が、私の働き方を変えるきっかけになったのです。
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配達先で見えた仕事への向き合い方
B山さんは、配達を担当する私に対して、いつも見下すような態度を取っていました。私が厨房の作業について質問しても、「配達担当が料理に口を出す必要はないだろ」と言われることもありました。それでも私は、調理補助として任された下ごしらえや盛り付けに取り組みながら、料理人たちの動きを見て勉強していました。
ある日、店では弁当メニューの見直しを進めており、店長から「調理担当にも、直接店に来られないお客さまの感想を直接聞いてほしい」と話がありました。そこで、仕込みを終えたB山さんが、私の配達に同行することになったのです。
訪問先は、以前から弁当を注文してくれていた高齢のC美さんの自宅です。弁当を渡した後、C美さんが居間の照明を見ながら、「電球が切れてしまったけれど、自分では交換するのが難しくて」と困った様子で話しました。
私は次の配達まで時間に余裕があり、照明も脚立を使わずに手が届く高さであることを確認しました。そのため、「よければ交換しましょうか」と声をかけました。
ところが、B山さんは不満そうに「ほっとけよ。店の仕事じゃないことまで引き受けるな」と言いました。店の仕事を優先すべきだという考えは理解できましたが、次の予定までは時間に余裕があり、交換にもそれほど時間はかかりそうにありませんでした。私はC美さんの了承を得て電球を交換し、すぐに配達へ戻りました。
「助かったわ。いつもありがとう」と、C美さんはほっとした表情を見せてくれました。
オーナーから提案された厨房での仕事
数日後、店のオーナーであるA子さんから声をかけられました。
「先日は祖母のこと、ありがとう。本当に助かったわ」
「何のことでしょうか?」と私が戸惑っていると、A子さんは、自分がC美さんの孫であることを明かしました。「祖母から、あなたがいつも丁寧に対応してくれると聞いていたの」と言った後、こう続けました。
「これまでの調理補助の仕事ぶりについても、厨房のスタッフから良い報告を受けているの。祖母への対応を聞いて、お客さまの立場を考えて行動できる人だとも感じたわ」
「もし希望があれば、配達の割合を減らして、厨房で学ぶ時間を増やしてみない?」
私は驚きながらも、その提案を受けることにしました。
「母が忙しかったので、子どものころから家で料理をする機会は多くありました。でも、店で提供する料理については、まだ学ぶことばかりです。基礎から教えてください」
そばにいたB山さんは、驚いた様子でA子さんを見ました。そして「配達担当の時間を減らしてまで、厨房の仕事を増やすんですか?」と声を荒げました。
A子さんは、「配達でお客さまの声を聞くだけでなく、これまで調理補助にも真面目に取り組んできました。すぐに難しい料理を任せるわけではありません。指導を受けながら、少しずつ厨房での仕事を増やしてもらうつもりです」と静かに返しました。
A子さんは事前に厨房の責任者とも相談しており、私の指導役や勤務の分担についても検討してくれていました。B山さんは納得していない様子でしたが、それ以上反対することはありませんでした。








