
私は、妻と義父とともに、家族経営の農園で野菜を育てています。長年、手間を惜しまず育ててきたトマトは、ありがたいことに取引先からも評価をいただいていました。ところが、ある契約更新の話し合いをきっかけに、私たちの農園は大きな転機を迎えることになったのです。
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突然告げられた契約条件の見直し
その日、私は妻と義父と一緒に、朝から畑で作業をしていました。その日は、長年トマトを納めていた取引先・Aフーズの視察が予定されていました。訪れたのは、新しく仕入れ部門を任されることになったB田さんでした。
最初は通常の視察だと思っていたのですが、話はすぐに契約更新の件へと移りました。B田さんは、「次の契約からは、仕入れ価格を下げていただきたいと考えています」と切り出しました。
私は、資材費や燃料費が上がっていること、品質を維持するためには収穫や選別にも人手が必要なことを説明しました。義父も、土づくりや収穫時期の見極めにどれだけ手間をかけているか、落ち着いた口調で伝えました。
しかし、B田さんはあまり納得していない様子でした。
「こだわりと言われても、こちらは価格が重要なんです。今はほかにも仕入れ先がありますから。田舎の農園のやり方に、いつまでも合わせるわけにはいきません」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなるような気がしました。私たちが大切にしてきた農園のやり方を、見下されたように感じたのです。
契約更新の時期が近づいていたこともあり、後日、正式に「次回契約の継続は見送る」と連絡が届きました。長く続いていた取引が終わることになり、私たちはしばらく言葉を失いました。
義父のひと言で見えた次の道
連絡を受けた後、私は落ち込みました。これまで積み重ねてきたものを、価格だけで判断されたように感じたからです。後日、作業終わりに「お義父さん、どうしましょう」と不安をぶつけてみると、義父は腕を組んだまま静かに言ったのです。
「ほう? 上等だ。なら、うちの野菜を本当に見てくれる相手に届けよう」
妻は何も言いませんでしたが、こわばっていた表情が少し和らいだように見えました。
それから私たちは、改めて自分たちの農園の強みを見直すことにしました。土づくり、収穫のタイミング、選別の基準、出荷先とのやりとり。今まで当たり前だと思っていた作業を、一つずつ確認し直したのです。
義父は「焦るな。ちゃんと作っていれば、わかってくれる人はいる」と言いました。その言葉に支えられながら、私たちは、改めて丁寧に畑と向き合いました。大きな取引先を失った不安はありましたが、それでも、私たちにしか出せない野菜の味があると信じたかったのです。








