パパ育休は“当たり前”の時代に。父親支援の専門家が語る、共働き×子育てを支える制度の活かし方
パパの育児休業取得率が大きく上昇する中、子育て支援もパワーアップ! 2025 年 4 月には育休や時短勤務による収入減を和らげてくれる 2 つの新制度「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」がスタートしました。
育児の専門家である大阪教育大学教育学部教授の小崎恭弘先生は、新たな給付制度は今後パパの育児休業取得率を大きく引き上げるだろう、と話します。これからの子育てはどうなっていくのか、新制度のポイントと併せて詳しくお話を聞きました。
パパの育休取得のハードルを下げた「きっかけ」とは?
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2025年4月に育児休業中の給付金が拡充され、子育て世帯への経済的な支援が手厚くなりました。パパが育休を取得しやすくする制度改正もあり、2024年度の厚生労働省の調査では、男性の育児休業取得率は40%を超えたことも話題になっています。
パパの育休取得が進んだ背景に何があったのでしょうか。
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これにはちょっとびっくりしましたね。僕自身はこれまで3度育休を取っており、最初に取得したのは日本で「育児・介護休業法」ができて間もない、約30年前になります。当時の男性の育休取得率は 0.1%ほどでしたから、かなり珍しがられました。
日本のパパに対する育児休業制度は、休業できる期間と給付金の手厚さから世界で最も優れていると、国際的にも評価されています。しかし制度はあるものの、日本ではパパが育休を取得するという文化がなかなか育たなかったんです。制度開始から約30年が経った2020年でも育休取得率は12%程度でした。
ずっと低かったパパの育休取得率が上向くきっかけとなったのが、2022年の「産後パパ育休」(出生時育児休業)だといわれています。このとき企業側には、対象者の1人1人に育休を取るかどうか、意向を確認する義務が課せられました。このことが企業文化を変え、パパの育休取得率向上に大きな影響を与えたとされています。
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企業側の対応を変えたことがきっかけなんですね。
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はい。日本には、男性は子育てよりも仕事を中心にするものだという固定観念が強くあります。だからパパが育休を取得するのは申し訳ない、子どものために休むのなら周囲に頭を下げないといけないような雰囲気もありました。だけど、企業側が「育休を取りますか?」と確認したり奨励したりするとなると、皆の認識が「育休取得は申し訳ないこと」から、「育休は当然取得するもの」というふうに変わってきます。
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心理的なハードルが下がると、育休を取る人が増えるということですね。
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まさしく2023年には男性の育休取得率が30%台に乗ったのですが、この 30%というのは社会学などで「クリティカルマス」と呼ばれる数値になります。組織の中で 3 割の人がその考え方を支持すると、多くの人が追随し、主流になるということを意味します。
ママだけに育児の負担が偏らないことは女性のキャリアアップや長期雇用につながりますから、企業側にもパパの育休取得はメリットが大きいということが周知されてきました。そして、2025 年 4 月には育児休業中の給付金が上乗せされ、実質手取りのほぼ10割相当がカバーされるなどの新制度がスタート。男性の育休取得率が 5割を超える日は目前だと思います。
「出生後休業支援給付金」は「育休取らなきゃ損」制度!?
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夫婦が共に子どもを育てる「トモイク」支援の一環として、2025年4月にスタートしたのが「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」です。それぞれどういった制度でしょうか?
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これは、子どもの出生直後の一定期間内(父親は出生後8週間以内、母親は産休後8週間以内)に、原則、両親がともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前の給与の13%を支給する制度です*。
* 一人親の場合など、一定の要件に該当する場合は、配偶者が育児休業を取得していなくても支給対象になります。これまでは「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」により、育児休業中は給与の67%が給付されていました。これに最大28日間、給与の13%が上乗せされるのが「出生後休業支援給付金」です。
合計すると給付率は休業開始前の給与の80%ですが、社会保険料の免除などにより、育休中でも手取り給与のほぼ10割を給付金でまかなえるというものです。
パパの育休は期間が短いことが指摘されていましたが、新制度により、赤ちゃんが生まれてすぐの大変な時期に 1 カ月程度のまとまった休みが取りやすくなりました。また、給付金によって収入のことはほぼ気にせずに、育児をする時間を持てるようになりましたので、育休は「取らなきゃ損」と感じられるほど、経済的なインパクトの大きい制度だと思います。
※1 手取り10割相当が受け取れるのは、28日分までです。
時短勤務も支援の対象に!「育児時短就業給付金」がスタート
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「育児時短就業給付金」は子どもが2歳未満の時短勤務中、低下した給与の10%を給付するという制度です。フレックスタイムやシフト制などで働く方も時短勤務をして給与が低下すれば支給対象になります。
時短勤務をすると、短縮した分給与が減るのが一般的です。従来は時短勤務を支援する制度がなく、給与が減ることを気にして、時短勤務制度を利用しない傾向にありました。こうした状況を踏まえ、時短勤務を対象とした給付金を創設し、時短勤務中の収入減を緩和することで、時短勤務を選択しやすくすることを目的としています。
また、産休・育休後はブランクがあるため、いきなり仕事に復帰できるか不安になる方も多いと思いますが、時短勤務をすることで職場復帰をしやすくする狙いがあります。
育休制度を活用するために「チームわが家」で作戦会議
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小崎先生の育児経験から、パパの育児は家族にとってどんな影響があると思われますか?
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子育ては決して思い通りにいくものではなく、誰しも壁にぶち当たります。パパが育児をしたからといって万事解決するわけではありませんが、ママと一緒に子どものことで悩んだり考えたり、一緒に失敗したり笑ったりすることはできます。夫婦が「チームわが家」となって子どもと向き合うことで、得られるものはたくさんありますよね。
僕はパパの育児で5人が幸せになるんだよ、とよく話しているのですが、その5人とはママ、パパ自身、子ども、企業、社会です。家族が幸せになることは、企業にとっては従業員のメンタルヘルス向上につながりますし、社会を豊かにする礎になるということです。
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夫婦で育児をするために、制度を活用するコツはありますか?
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育休制度は多くの人が柔軟に活用できるように設計されている半面、たびたび改正され、複雑になっています。例えばパパの育児休業は、いくつかの制度を組み合わせることによって最大 4 回に分けて育休を取得できるようになり、かなり柔軟化されました。労使協定を結べば、時間や日数を限定して育休中に働くことも可能になっています。
育休とは異なりますが、「子の看護休暇」についても2025年4月より、入園式や卒園式、入学式への参加などの学校行事にも利用が認められるようになりました。
企業によっては、独自の子育て支援制度を設けている場合もあります。ただいくら制度があっても存在を知らないと、使えるものも使えません。制度については人事や自治体の窓口に尋ねてみるほか、「育児休業制度特設サイト」、「共育プロジェクト」などでも詳しくまとめてあるので、参考にしてみると良いですね。
夫婦で「チームわが家」を組んで情報収集をし、どんな働き方ができるか、ぜひ話し合っていただきたいと思います。
小崎 恭弘 先生
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、元大阪教育大学附属天王寺小学校校長
兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。NHK Eテレ「すくすく子育て」出演。2022年より「保育」と「育児」分野のYahoo!ニュースオーサーに。
編集部まとめ
世界トップクラスの日本の育休制度は今後も進化していきます。2025年4月にスタートした「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」もその一部。小崎先生のおっしゃる「使わなきゃ損」には納得ですね。厚労省が公開しているシミュレーターなどを参考に、制度の内容をぜひチェックしてみてください。

