宮崎瑠依さんが小児科医・今西先生に直撃!保育園の感染症対策は?予防接種はなぜ大事?
これまでほとんど熱を出したことのなかった子どもが、保育園に入園したら病気で休んでばかり……という話はよく聞きます。ママキャスターの宮崎瑠依さんも、2歳の息子さんを保育園に入れて約5カ月の間、感染症にかかる頻度の多さに驚いたそうです。少しでも予防するにはどうすればいいのでしょうか? 入園前にできることは? 宮崎さんと小児科医の今西洋介先生がオンラインで対談をおこないました。
対談するのはこの2人
宮崎瑠依 さん
タレント、キャスター。2020年5月に第一子を出産。「ZIP!」(NTV)、「さまぁ~ずスタジアム」(BS日テレ)など、テレビ、ラジオなどで活躍中。
今西洋介 先生
新生児科医、小児科医、医療ジャーナリスト。漫画『コウノドリ』の取材協力にも参加し、作中の今橋先生のモデルとなる。三姉妹の父。
入園後の病院通いが落ち着くのはいつごろ?
入園後、季節がひとまわりすると落ち着く子どもが多い
- 息子は2歳3カ月のときに保育園に入園したのですが通い始めて1週間で「手足口病」になりました。「え、もう!?」という感じで、多少の覚悟はしていたけれど、想像以上に保育園では病気にかかる印象です。
保育園に行きだしたとたん、さまざまな感染症にかかることを、俗に「保育園症候群」ということがあります。そのくらい集団保育の場では感染症にかかりやすいんです。
小さな子どもはまだ免疫力が低いし、マスクの装着もできません。衛生観念もないので、集団で生活していたら、唾液などを介して感染するのはある程度仕方のないことなんですよね。特に保育園入園直後は病気になることが多いものです。
- 実感としてわかります。ようやく最近、保育園からのお迎え要請が減ってきました。
- 保育園入園から9~10カ月くらいすると、子どもの病気で親が仕事を休むケースが減ってくるといわれています。
- 先輩ママから「保育園に行くと風邪に強くなるよ」と聞いていたのですが、その通りなのですね!
- 感染症は季節性があるので、だいたい1年くらい経つとあらかたの感染症にかかって抗体ができてきます。春夏は手足口病やヘンパルギーナ、秋冬はインフルエンザ、RSウイルス感染症などの呼吸器系の感染症、ウイルス性の胃腸炎……。周囲で流行りだしたら注意した方が良いですね。
- 保育園ではお便りで「○○組でこんな感染症が流行っています」と教えてくれます。また、小児科に行くと、必ずといっていいほど「保育園で何か流行っている病気はありますか?」と聞かれます。大切な情報なんですね。
子どもは体温調節機能が未熟。急な発熱もよくあること
- 今西先生にもう1つお聞きしたいのが、朝、登園するときは元気だった子どもが、保育園に行ったら急に発熱して呼び出しがかかるケースについてです。あれはなぜでしょう? 子どもの体調を把握するのが難しくて……。無理に登園させちゃったのかなって申し訳ない気持ちにもなります。
子どもは元気な様子のままポーンと発熱することがよくあります。僕は3人の娘がいて小児科医をやっていますが、子どもの変調に気づくのは難しいと思います。
理由の1つは、子どもは体温を調節する機能が未発達であること。だからたとえ体調不良のサインに気づかなくても、子どもを病院に連れて行ってかかりつけ医と一緒に治療していけば、問題ありません。
- そうおっしゃってもらってホッとしました!
自宅でできる感染症対策は?
手指はアルコール消毒だけでなく流水でよく洗う
- 子どもが保育園に通園するうえで、自宅でもできる感染症対策を教えてください。
もしお子さんが何らかの感染症にかかった場合には、新型コロナ感染症の自宅療養のときと同様の対応をすると良いですね。
可能な限り部屋を分ける、子どもの世話をする人を限定する、親はマスクをする、部屋の換気をするなどです。国立成育医療研究センターが子どもの自宅療養のポイントをまとめ、ホームページで公開しています※。参考にしている親御さんが多いようです。
- 息子がウイルス性の胃腸炎にかかったときは、ゴム手袋をつけておむつ替えしたほうが良かったかな……と、後から思ったんです。素手で替えていたので私も感染して大変でした。
そうですね。わが家も感染対策のために使い捨ての医療用手袋を常備しています。ネットでも購入できるので用意しておくと良いかもしれませんね。
小さい子の風邪はおむつからうつることが多いので手指衛生はとても大事。おむつを替えた後は流水でしっかり洗ってください。
- アルコール消毒だけではだめなんですね。
- ノロウイルスなど、アルコール消毒では対応できないものもあります。アルコール消毒よりも流水による手洗いのほうが予防効果は高いので、医療現場では、まず流水で手を洗ってからそのウイルスに適した感染対策をおこないます。
- そう考えると、保育園で子どもたちの手洗い習慣をつけてくれているのはとてもありがたいです。息子は帰宅後や食事の前後には、嫌がらずに手洗いに向かいますから。
育児分担をしてウイルスの接触を減らす
- ただ現実問題、親が子どもの風邪をうつらないようにするのは限界があると思います。子どもはよだれいっぱいで近づいてくるし(笑)、ご飯をあげたり、赤ちゃんだったら授乳したりと、接触を避けることはほぼ不可能です。
- 私も風邪をひいている子どもに、フーフーしてご飯をあげていました……。自分の風邪予防よりも目の前の子のお世話を優先しちゃいますよね。
そうですね。だから子どもが病気になったときの感染対策は必要ではあるけれど、できる範囲でおこなってくださいと伝えています。
予防の意味では、パパとママで育児を分担することが役に立ちます。子どもがウイルスに感染した場合、接触機会がそれぞれ減るわけですから。共倒れの可能性もありますが……。子どもが元気なときは育児分担、子どもが病気になったらどちらか片方が看病する、というのも対策の一つです。
- 現在妊娠中で夏に第二子が生まれます。きょうだい間の感染対策はどうすればいいでしょう?
- 赤ちゃんが注意したいのはRSウイルス。2歳までにほとんどの子どもがかかるウイルスで、幼児以上の子どもは鼻風邪で済むことがほとんどですが、6カ月未満の赤ちゃんは重症化することがあります。感染症の多くは、飛沫、接触によるものですので、上の子が風邪をひいたら、こまめに手を洗う、上の子と下の子が過ごす部屋を分ける、おもちゃやドアノブ、手すりなど共有するものは消毒するなどの対策をおこなうことが大事です。
感染症対策の基本は予防接種
入園前に受けられる予防接種は済ませておく
- 保育園で病気をもらってくるのはある程度仕方のないこととして、入園前にはどんな予防策が必要でしょうか?
- 子どもを病気から守るには予防接種が最大の効果を発揮します。予防接種は「かかると重篤な症状を引き起こす病気」を防いでくれます。どれも重要なものですので、月齢に合わせて接種できるものを必ず受けてほしいです。また、自分の子が感染しないだけではなく、他の子に“うつさない”ためにも入園前に受けられる予防接種は済ませておきましょう。
予防接種の種類
定期接種 | ロタウイルス、四種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)、B型肝炎 、ヒブ、小児用肺炎球菌 、BCG、MR(麻しん・風しん)、水痘(水ぼうそう)、日本脳炎、子宮頚がん(HPV) |
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任意接種 | おたふくかぜ、インフルエンザなど。 |
※ 定期接種とされるものであっても、法律で決められている接種年齢から外れた場合には任意接種としての扱いになる。
- わが家でも入園前に、予防接種の記録を保育園に提出しました。今の子どもたちは、私たちが子どものころよりたくさん予防接種を打ちますね。
僕と宮崎さんは同世代ですが、ありがたいことに僕たちが子どものころに比べ、3倍くらい予防接種の種類が増えているんですよ。
十数年前、研修医のころは細菌性髄膜炎で入院する子どもがいたんですが、この病気を予防する予防接種が定期接種になってからは一度も見ていません。細菌性髄膜炎は、昨日まで元気だった子が突然意識障害を起こしたり、寝たきりになってしまうこともある怖い病気です。そんな病気が定期接種になったことによって見られなくなったのは、まさに予防接種の大きなメリットなんです。
先生は医療の現場で予防接種の予防効果を目の当たりにしているのですね。
予防接種の種類が増えたといえば、息子のときはロタウイルスが任意接種でした。ちょっと費用がかかってしまったんですが……、先輩ママから「ロタにかかったときが一番大変だった」と聞いてわが家は接種しました。やはり任意接種も受けたほうが良いのでしょうか?
はい。現在はインフルエンザとおたふくかぜが任意接種になっていますが、制度上の問題というだけで重要な予防接種であることには変わりありません。
インフルエンザに関しては、日本では治療薬を服用して治ることが多いですが、世界的には年間約3万人の子が亡くなる病気です。けいれんや意識障害を引き起こすインフルエンザ脳症を発症することもあり、予防接種で重症化を防ぐことは大切です。
それにいずれも出席停止期間が設けられているので、もしも子どもがかかってしまったら仕事への影響も出てきます。自治体によっては予防接種の費用を一部負担してくれることもあるので、ぜひ受けてほしいですね。
出席停止の基準
おたふくかぜ | 下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日経過し、かつ、全身状態が良好となるまで |
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インフルエンザ | 発症後5日、かつ、解熱後2日(幼児は3日)が経過するまで |
注射が嫌いな子には絵本で勇気づける
- 予防接種の種類が多いのはありがたい一方で、スケジュール管理が大変だなと思うことはあります。忙しくて、定められた期間中に受けられなかった……という親御さんの気持ちもわかるんです。
小児科医が言うのもなんですが、予防接種の予約をして、子どもの体調をチェックして、病院に行って……ってとても大変なことですよ。
同時接種をすれば病院に行く回数を減らせるし、平日が難しい場合は土日接種を受付けている病院もあるので探してみても良いかもしれません。受け漏れがあった場合はかかりつけ医に相談してみてください。
- 息子は最近、注射をとても嫌がります。抵抗が激しくなってきて、私もおなかが大きいし、夫と一緒に連れて行かないと予防接種は難しいかもしれない。そうかといって夫婦の仕事の予定を合わせるのも大変だなぁと。最後にとても個人的な質問なのですが(笑)、どうしたら、息子に大人しく注射を受けてもらうことができるでしょうか?
小児医療の現場では「プレパレーション」といって、あらかじめ、子どもにどういった処置をおこなうのか説明をすることで、恐怖心を少し下げる方法があるんです。予防接種も同じように、前日から注射を受けることを伝えてはどうでしょうか?
1歳や2歳の子でも「明日はチックンするけど、頑張ろうね」って理解できると、暴れなくなったりします。
- やだ、私は真逆でした! 何も言わずに連れて行っていました。
そういう方もいらっしゃいます。そうすると、子どもが逃げて看護師が追いかけて、まるで『トム&ジェリー』みたいになったりして(笑)。
絵本で説明しても良いですね。僕の病院には、けがをしたノンタンが注射を受けるお話『ノンタンがんばるもん』を置いています。他にも注射をテーマにした絵本はいろいろあるんですよ。
- 今西先生、とても良いアイデアですね。さっそく取り入れてみます。ちょっぴり憂鬱だった予防接種が、次回楽しみになりました。
編集部まとめ
子どもを怖い感染症から守るために、予防接種は必要です。任意接種は、自治体によっては一部費用を負担してもらえることがあります。集団生活と感染症は隣り合わせですが、わが子が元気に保育園生活を過ごすために、予防接種のスケジュールを改めて確認し、受けられる予防接種はできるだけ済ませておきましょう。
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2023年3月作成 MAT-JP-2300453-1.0-03/2023
今西洋介 先生
新生児科医 小児科医 医療ジャーナリスト
プロフィール
漫画『コウノドリ』の取材協力にも参加し、作中の今橋先生のモデルDr.となる。三姉妹の父。