小川クリニック(神奈川県横浜市)院長インタビュー
「はずさない、流行りに飛びつかない医療」をモットーに
昭和39年、小川院長のお父さまがこの地に小川クリニックを開院し、小川博康院長があとを継がれたのが平成9年のこと。地元に密着した産婦人科医療を提供し、地域に貢献してきて、早20年。開院から現在までの小川クリニックの考え方について伺いました。
「もう20年も前になりますが、父から小川クリニックを引き継いだときには、とにかくがむしゃらでした。私も父もおこなっていた“はずさない医療”。これが小川クリニックの本質だと思います。
流行りに流されずに、産科医療として正しいことを進化させながらやりつづけていきたい。かといって新しいものに取り組まないわけではありません。幸い、父も新しいものには積極的にチャレンジしていたので、私の代になっても、新しいものを取り入れることに、父も賛同してくれました。はずさない医療の中で、正しいことはもちろん、新しいことにもどんどん取り組んでいます。
産婦人科は、妊娠、分娩、産褥の自然現象に対応しないといけません。自然現象とはいえ、そのときに起こりうるリスクをできるだけ防ぐ必要があります。患者さんと医師がお互いに話ができ、起こりうるリスクの予兆をいち早くつかんで、一人ひとりに合ったオーダーメイドの医療をしないとダメなんです。
結局は、お母さんのおなかの中から赤ちゃんを楽に外の世界へ導くことが、楽なお産なんです。赤ちゃんが楽、分娩が楽、お母さんが楽、そして医療の負荷も楽にしていく仕組みづくりが大切なんです」
「また、分娩を無事成功させるには、すべてタイミングが大切です。人によって、全員骨格もちがうし、経過も年齢も、いろいろなことが違います。分娩が進んでいくなかで、分娩の抵抗となる事柄を減らし、足りない部分を補ってあげるタイミングが重要なんです。
その一つの手段として、無痛分娩もおこないます。赤ちゃんとお母さん、そして医師が楽な分娩を常に考え、取り組んでいます」
「そして、わたしのこだわりは、『患者さんにおいでいただけることが第一』ということです。自分がやりたい医療ではなく、患者さんに求められるような医療とはなにかを常に考えています。ですから、集客のための取り組みはほとんどしませんでしたね」
どんな患者さんも受け入れるために
「小川クリニックの方針は、“おいでいただいた患者さんは、どんな患者さんでも診る”です。すべての患者さんを診させていただいています。その後、ほかの病院を紹介することもあるかもしれません。しかし、専門医である私が患者さんを診察させていただき、患者さんと相談し、最適な対応ができる先生・病院を紹介させていただくことが、患者さんにとっていちばんだと考えています」
「また、患者さんにおいでいただくためのひとつとしてはずせないのが、お産の技術です。会陰切開は、会陰が肛門まで裂けるなどの危険を防ぐための切開でもあるのです。会陰切開を入れる場所によって、傷も痛くなくなり、治りもよくなります。
また、帝王切開のあとの傷の治り方は縫い方に左右されます。早く傷が治るように縫うテクニックはとても重要です。傷をきれいにしてあげることが、妊娠・出産されたお母さんへのごほうびだと思って施術しています」
「さらに、スタッフには常に『プロフェッショナルになれ。意気高だかになるな』と言っています。病院が、偉そうになったらだめなんです。地域の特徴や病院の規模により、臨機応変に対応していく姿勢が大事なんです。
そして、『病気でなくて、患者さんを診ろ』と言っています。分娩は、常に何があるかわかりません。患者さんは15歳の方もいらっしゃれば、45歳の方もいらっしゃいます。すべての患者さんに同じコミュニケーションをしても、その患者さんに必要なことが伝わりません。患者さんそれぞれ、一人ひとりを診させていただいたうえで、その患者さんに合った対応をすることが重要なんです。そんな当たり前のコミュニケーションをがんばってほしい。そこに敏感でいるプロのスタッフ集団でいたいんです」
産院ごはんへのこだわり
小川クリニックは、医療の技術、そしてスタッフのレベルもさることながら、毎日の産院ごはんにもとても力を入れていらっしゃいました。取材当日にいただいた産院ごはんはどれもおいしく、口にほおばった瞬間に笑みがこぼれてきました。
小川院長は、「食事はクリニックのウリではないですよ。おいしくて新鮮なものをご提供したいだけです」とおっしゃっていましたが、シェフにお話を伺ってみると、どれもこだわり抜いた食材を使われていて、これまた二重に驚いてしまいました。
正しくて、意味のあることをやっていきたい
「妊娠、出産、子育ては分断できません。これをひとつの流れでみていきたいと思っています。母乳育児がいいとか、子どもは抱きしめたほうがいいとか、そういう部分部分ではなく、本当の愛情は、子どもをどれだけしっかり見てあげて、手をかけてあげるかだと思っています。
新生児、乳児、幼児……それぞれの時期によって、子どもに手をかける方法が違います。よいお産から始まり、赤ちゃんのうちから、おなかにいるうちから声をかけて、お子さんをファミリーの一員として受け入れていただきたい。
そして、目の前のことばかりではなく、少し先をみていただきたい。20歳になったときのイメージをして、一生懸命、赤ちゃんを育てていただきたい。そういうママを応援していきたいです」