愛育病院(東京都港区) 産院ごはん

家庭料理を基本に25年以上研究し続けた献立

取材日の昼食の献立は、栗ごはん、ぎせい豆腐、ピーマンソテー、いり鶏、小松菜と桜えびののり和、巨峰

高橋さん「愛育病院の基本の献立は、退院後もご家庭で作っていただけるように、家庭料理を基本にしています」

栄養士の方たちが25年間以上をかけ、栄養学と妊産婦さんの声から研究を重ねて、蓄積された愛育病院のレシピ。その数、約1000レシピ。これらがデータベースに登録してあるそうです。それも1年半前の移転に伴い、整理された結果の数字というから驚きます。「楽しみにしていた」「お友だちに紹介したい」という方がいらっしゃるのも納得です。

高橋さん「データベースのレシピに加えて、時代に合った新しいレシピも追加していくようにしています。愛育病院で提供される代表的なレシピは、『愛育病院の安産レシピ』(主婦の友社)という1冊の本になっています。この本は、愛育病院で出産することが決まった妊婦さんにも、タイトルを『愛育病院のヘルシーレシピ』と表紙を変えて、手渡されます。今日の料理はここに載っています、とお話しすると、作り方をご覧になる見る妊産婦さんもいます。出される料理がすべて掲載されているわけではありませんが、愛育病院で実際に召し上がっていただき、食事のバランス、組み合わせ、味付けなどを知っていただく機会としています」

『愛育病院の安心レシピ』(主婦の友社)と出産予定の妊婦さん用の『愛育病院のヘルシーレシピ』

愛育らしさは食材と調理工程への徹底したこだわり

食材の検品作業中。右の写真の中央が栄養士の田代さん

愛育病院の産院ごはんは、伝統的のレシピや献立に脚光があびがちですが、何よりもそのおいしさの秘密は、調理工程の中にあります。小児科も併設しており、1回につき70~80食を一度に調理。そのため、効率性が大事になるはずですが、愛育病院の場合は、調理工程のさまざまなシーンで、担当栄養士の方がこだわりを持って検査していくことを怠りません。

まず、こだわりを感じたのは食材です。1年半前に、愛育病院は広尾から芝浦へ移転をして、調理体制も変更しました。そのときに食材の仕入れは業務委託会社が行うことに。一つひとつの食材ごとに、病院側が納得するまで産地をチェックし、何度も要望を出し直し……と徹底的に吟味したのだそうです。現在でも毎日、届いた食材を検品している徹底ぶりです。

送られてきた食材は、まず温度チェック

高橋さん「おいしい食材選びには、業務委託会社の食材担当の方の協力もあり、パンの新しい仕入れ先も『ブーランジェリー・ア・ラ・ドゥマンド』というおいしいパン屋さんを近くに発見。特別メニューのときやクリスマスなどの行事食には、焼き立てのパンを仕入れています。とってもおいしいと評判なんです」

その徹底ぶりは食材選びだけではなく、調理工程も同様です。

高橋さん「素材を生かす切り方や調理方法があります。切り方によって味も変わってきますし、食感も見た目も違います。それらを調理してもらっている方たちにも覚えていただき、マニュアルにもしています。だし汁ひとつをとっても、素材の味を最大限生かすように心がけています。調理の工夫をしていますが、特別なことはしていません。それはご家庭で作っていただけるようにするためです。毎回分量を量るのは難しいと思いますが、病院のレシピ集を参考に調理する場合は、一度分量を量って作ってみてください。味の目安がわかると思います」

調理室の様子
調理室での盛り付けの様子
提供前には必ず検食
配膳前のチェックも丁寧に

人気のスペシャルメニューと行事食

10月21日のスペシャルメニュー

高橋さん「通常の献立以外に、何種類かのスペシャルメニューを用意しています。希望される方から1500円をいただいて、ちょっと豪華なグレードアップした料理を提供しています。出産後の記念に、あるいは愛育病院で出産したという記念に、召し上がられる方が多いです」

10月21日のスペシャルメニュー
  • ごはん
  • 中華風コーンスープ
  • 牛ヒレ肉のブラックペッパーソース
  • 冬瓜の蟹あんかけ
  • パパイヤ
  • 杏仁豆腐
10月28日のスペシャルメニュー
サクッと揚がった天ぷら
10月28日のスペシャルメニュー
  • 赤飯
  • 生麩の清汁
  • 茶碗蒸し
  • 鯛の姿焼
  • 天ぷら
  • オクラのごま和え
  • メロン

高橋さん「スペシャルメニュー以外にも、季節のごとのイベントメニューも用意しています。クリスマスや正月料理、節分など、毎月ひとつはお出ししています。妊産婦さんからは『季節が感じられてよかった!』『イベント気分も味わえてとってもうれしかったです』とご好評をいただいています」

愛育病院の「産院ごはん」の体制

移転後、さらに美しい外観となった愛育病院

高橋さん「現在、愛育病院の産院ごはんの体制は、栄養科職員4名を中心に業務委託職員の方々と運営しています。栄養士には、25年以上勤務しているスタッフが2名、そして9年目のスタッフが1名と、長く愛育病院で勤務しているスタッフが多いです。長い間、愛育病院の食事のあり方にこだわり、妊産婦さんのことを考えながら、数々のレシピを積み上げてきています。特別メニューのレシピは、栄養科職員で検討、試作し、最終的にはドクターや看護師、事務部と一緒になって評価をしながら決めてきました。さらにおいしく、また健康につながる食事提供を目指して、現在も新レシピなどを研究しているところです」 

栄養相談、母親学級にも力を入れている!

母親学級やマタニティヨガなどは広いスタジオで

高橋さん「愛育病院では、妊産婦さんに向けて個別の栄養相談を実施し、希望者の方対象の母親学級でも栄養指導をしています。仕事で忙しい、外食が多いなど、妊産婦さんごとにさまざまな食生活・生活習慣がある中で、そもそも料理が不得意で困っている、という悩みをお聞きすることが多いです。私たちができることは、その方たちに食事・栄養の大切さをお伝えし、家庭でも実行できる食事の提案をしていくこと。入院中にご提供している料理もそのひとつだと思っています。母親学級では、まず“食事はおいしいと思って食べることが大切です”とお伝えします。外来では、妊娠初期に来院されたときから『食事見直しアンケート』でフォローを開始します」

愛育病院の病室は、まるでホテルのようにスタイリッシュ

高橋さん「いろいろな健康情報が多く流れている今、信頼のおける、正しい情報を得ることが重要です。クックパットベビーのレシピカードやサイトもそうですし、愛育病院としても産院ごはんをはじめ、栄養に関する知識のフォローやレシピ本を通して、正しい情報発信をしていきたいと思います。これからも、食事の悩みやそれにつながる妊娠・出産・育児の心配ごとを解消する手助けとなり、ご本人や家族の健康管理のお役に立てればと思っています」

移転をして新しくなった愛育病院。新しい体制となった今も、妊産婦さんのために、築き上げて伝統を守りながら精力的な取り組みをされていました。

ベビーカレンダー編集部


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