酒本産婦人科医院(奈良県橿原市)産院ごはん
食材は地元の大和野菜を中心に
大嶋料理長「酒本産婦人科医院のお食事は、基本的に野菜が多めです。奈良県でしか流通していない大和野菜を使っています。生産者さんが朝収穫したものを直売所で購入しているので、とても新鮮です。また、お肉も、大和牛、榛原牛、ヤマトポークなど地元産で、牛を一頭買いしているお肉屋さんから、お魚は、毎朝、鶴橋の市場で私がほぼ毎日仕入れています」
大嶋料理長「メニューは母乳によいものを心掛けていますので、野菜、特に根菜類は多めに使っています。しかし、母乳によいものといっても極端なカロリー制限とか、あれは食べてはダメ、これはダメというようなものではありません。
出産後の頻回授乳に耐えられるように体力をつけ、貧血、むくみ、便秘などの対策としても有効な食事になるように工夫しています。また、マタニティブルーになりにくいように、豆乳などの大豆製品も積極的に取り入れています」
大嶋料理長「メニューは、だいたい前の週に翌週の分をスタッフみんなで決めるようにしています。メインは同じでも副菜を季節によって変えたりしています。ただ、天候が悪いなどの理由で予定の食材が入らない場合は、臨機応変にそのときにある食材で作ることもあります」
真似して作っていれば、やがて自分の味になる
大嶋料理長「酒本産婦人科医院で提供される食事が、食育の見本になればと思っているので、患者さんにはいつでもレシピを聞いて欲しいですね。家でもがんばって作ってもらえるとうれしい。真似していると、それが自分の味になるんですよね。僕もそうですからね。
ただプロが作る料理は、煮込む時間とか食材の下ごしらえとか、一食にかける時間や手間が違います。家で作るときは、抜くところは抜いていいと思います。ただ、『ちょっと一手間かけるともっとおいしくなるよ』というのは教えたいです。それで真似して作って自分の料理にしてもらえれば、こんなにうれしいことはないです」
食べ終わって2日後ぐらいに食べたくなる「イタリア風和食」
大嶋料理長「酒本産婦人科医院で提供される料理は、基本はイタリア料理なんですけど、日本で作る限りは和食だと思っています。イタリア風和食とでもいう感じでしょうか。調理法や調味料はイタリアンだけど、食材、素材は日本のものですからね。イタリアンだけど、胃もたれしない和食のような食後感というか、食べ終わって2日後ぐらいにまた食べたいなと思うような食事を出したいと思っています。
自然のうまみを引き出すように作るので、必要以上の塩分は使いませんし、オリーブオイルも多量に使うこともありません。ですがオリーブオイルや塩は、野菜・魚・肉用、そして焼き用・仕上げ用と使い分けています。
私の一押しメニューは、ブイヤベース。得意料理で、月1回くらいの頻度でお出ししています。素材にもトマトソースにもこだわっています。イタリアンシェフなので、その30年の経験が詰まった自信作です」
酒本産婦人科医院のシェフになった理由
大嶋料理長「高校のときに家族で行った鉄板焼きの店に憧れ、料理人になりました。はじめはたまたまイタリアン2軒、その次がステーキハウス、それで、またイタリアンに戻って。そして29歳のとき、料理長になって店を任されたんですが、自分の中の引き出しがなくなったので日本を離れ、イタリアで1年半くらい働きました。
その後、大阪で自分のイタリアンのお店を始めて、そのとき、お客さんとして来ていた酒本院長にうちでやらないかと声をかけてもらったのがきっかけで、2017年3月から酒本産婦人科医院ででシェフを務めています。
産婦人科で働こうと思った理由は、全然未知の世界だったからです。挑戦というか。実際に産婦人科に来たら、こちらのほうが大変でしたね。一般の飲食店なら、1カ月同じメニューでもOKです。お客さんにメニューを選んでもらうわけですから、お客さんが嫌いなメニューは注文しなければいいんです。
しかし、産婦人科で患者さんに出すお料理は同じようにはいきません。産婦人科は、昼夜ずっと日替わりのメニューを出すようなものですね。患者さんに飽きられないように、メニューもどんどん考えていかなければいけないし、アレルギーなども考慮しなくてはいけないですし。好き嫌いの分かれる癖の強いものは避けて、みんながみんな、おいしいと思えるメニューを目指しています。
また、料理を食べる人が女性なので、彩りや盛り付けも今まで以上に意識するようになりました。ここにきて料理の幅が本当に広がりましたね。和食、中華も勉強中です」
「まだまだ勉強中です」とおっしゃる大嶋料理長からは料理への強い愛情と飽くなき向上心を感じました。ますます進化し続ける酒本産婦人科医院の産院ごはんにこれからも注目ですね!