天神尚子(てんじんひさこ)先生プロフィール
2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
『三鷹レディースクリニック』
住所/東京都三鷹市下連雀3-31-4 ライオンズマンション三鷹第8 1F
TEL/0422-70-1150 http://mitaka-ladies.jp/
インタビュー
---社会の変化により、仕事をもちながらも妊娠・出産期を迎えるワーキングマザー予備軍が増えています。患者さんの中でも多くの悩みを持ちかけられることが多いと思うのですが……。
働きながら妊娠、出産期を迎えられる女性は、たくさんいらっしゃいます。かくいう私もその道を通ってきた一人です。
でも、自立した社会人として働いていらっしゃる女性は、精神的にも「がんばり屋さん」が多いみたいですね。「会社に迷惑をかけられない」「人に仕事を任せておけない」などと、妊娠中でもついつい残業をしてしまうことが多いようです。深夜残業で体調をくずして、病院に駆け込んでこられる方もたまにいらっしゃいますが、妊娠中にこんなに無理をして働くのは論外です。
特に妊娠初期などのデリケートな時期は、体をゆっくり休ませることが大切です。母親としての自覚があるのなら、まずは自分の体のことを考えてください。同僚や上司への気兼ねから、仕事量を減らせないという方もいらっしゃいますが、日頃からあなたががんばって働いていて、上司や同僚とうまくコミュニケーションがとれていれば、こういう「非常時」にこそ協力してくれるはずです。
そもそも法律により、妊娠中の女性は時差通勤や勤務時間の短縮、軽易な業務への転換などの権利が認められており、雇用主は妊娠・出産を理由にした解雇をすることはできません。遠慮をせずに、医師に診断書を書いてもらえるよう相談してみてはいかがですか? 自分の体とおなかの赤ちゃんを守ることも、母親としての大切な仕事です。ただ妊娠・出産はあくまでもプライベートな事情です。権利の上にあぐらをかかず、謙虚な気持ちを持つことももちろん大切です。
---出産は女性にとって最も大きな仕事です。ちゃんと子どもを産めるのか心配、という女性も多いようですが……。
そうですね。いまはいろいろな情報が氾濫していて、どれを参考にしたらよいか判断に迷う方も多いようです。あれもこれもと噂や根拠に乏しい情報に耳を傾けず、信頼できる医師、助産婦に相談をすることが大切です。
特に助産婦とのコミュニケーションは大切です。助産婦には生活習慣全般に関するさまざまなことを相談して、しっかりと信頼関係を築いてください。助産婦は妊産婦の精神面でのフォローをすることも大切な役割のひとつなので、不安に思ったことは何でも相談してみるとよいと思います。
よく出産時に妊婦さんがパニックになって、叫んだり、暴れたりする「オカルト出産」が話題なっていますが、これは妊娠中に出産に関する情報をきちんと把握していない方に多いようです。日頃から医師や助産婦さんから出産に関する段取りや心構えなどを聞いて、心の準備が整えていればパニックにならずに出産に臨めるはずです。出産時に一番信頼できるのは、やはり妊娠の経緯を見守ってきた医師であり助産婦なのですからね。
また、「体がきゃしゃだから」など体型や体質的な理由で「難産かも」と取り越し苦労をする方もいらっしゃいますが、それは杞憂です。太り過ぎないように体重管理をする、適度に体を動かすなどのポイントに気をつければ、普通に日常生活を送っている限り誰でもちゃんと産めるのです。
初産は特に不安でいっぱいかもしれませんが、どうぞ大船に乗った気持ちで出産を迎えてみてください。あとで振り返れば、妊娠・出産期を通じた体験は、変化に富みとてもドラマチックなものです。女性にしか味わえないこの体験を十二分に満喫しよう、そんなゆったりとした気持ちで過ごされると心身ともに充実したお産ができると思います。