

臨月で里帰り中、突然の訪問者
臨月を迎え、実家へ里帰りしていたある日のことです。両親は近所のスーパーへ買い物に出かけており、家の中には私ひとり。静かな午後のひとときを過ごしていたとき、インターホンが鳴りました。
モニターに映っていたのは、私より少し年上に見える、上品できれいな女性。すると「パパいますかー?」という明るい声が聞こえ、私は思わず固まってしまいました。「パパって……誰? うちの父のこと?」と、頭の中は一瞬で真っ白に。
恐る恐る玄関へ出ると、彼女はにこやかな笑顔でこう言いました。
「私は看護師で、お父さんには以前とてもお世話になったんです。娘さんがご出産間近だとうかがって、ぜひアドバイスをお伝えしたくて!」
突然の展開に困惑しながらも、外出中の父に連絡を入れました。ほどなくして帰宅した父は、驚く様子もなく「〇〇さん! 来てくれたんだ、ありがとう!」と親しげな様子。気づけば、父、母、女性、そして私の4人で、わが家のリビングでお茶を飲むという奇妙な状況になっていました。
愛人アピール…!?漂う不穏な空気
楽しげに話す父と女性の傍らで、母の表情は硬くこわばっています。娘の私から見ても、「パパ、また飲みに行こうよ!」など、どこか一線を越えたような、妙に距離感の近い馴れ馴れしさで話す二人の間には、ただならぬ空気が流れていました。
もともと父は昔から女性にモテるタイプで、母も私も「女性の影が絶えない人」だと半ば諦めてはいたのですが、臨月の体には、あまりにも刺激が強すぎる光景です。
女性の本当の目的はわかりませんが、おそらく彼女も父の愛人で、看護師という立場で私の出産を応援するフリをして、自分の存在を突きつけることが狙いだったのでしょう。「私はお父さんとこんなに親密なのよ」とアピールしに来たのだと感じずにはいられませんでした。
それにしても、まさかこのタイミングでこんな事態が起こるとは夢にも思わず、ゾッとして背筋が凍りました。
娘の胎動にパワーをもらい…
心臓はバクバクと高鳴り、驚きのあまり体が硬直して「胎教に悪いよ……!」と心の中で叫びました。しかし、そんな私の不安をよそに、おなかの娘は元気に動き回り、まるで私を励ましてくれているかのよう。
「このまま産気づいたらどうしよう」という不安もありましたが、娘の存在を心強く感じることで、なんとかその場を無事に乗り切ることができました。
今でもあの日の“カオスな午後”は、忘れられない強烈な出来事として記憶に残っています。けれど、あの極限状態で娘の力強い胎動に何度も救われたことで、「想定外の事態を受け止めながら進んでいく力」を少しだけ身につけられた気がします。
出産や子育ては、思いもよらない出来事の連続。それでも、深呼吸をして一つずつ向き合っていくことで、どんなハプニングもいつか自分自身の糧にしていける。あの日の出来事は、これから始まる育児に向けた、私なりの「心の準備」になったと感じています。
著者:佐々木芳子/40代女性。2020年生まれの5歳の1人娘と夫と3人暮らし。現在は飲食店で勤務中。趣味は料理と書道。もくもくと作業をするのが好きな性格。
作画:まっふ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)