ナース服ににじんだ赤いシミ
生理2日目で経血量が多かった日、外科病棟で働いていた私は忙しい業務に追われていました。お昼を過ぎても一度もナプキンを替えることなく、座ることすらできないまま、動き続けていたのです。「ナプキンに少し違和感があるかも……」と思ったものの、患者さんの対応を優先していました。
すると先輩が背後からやってきて、小さな声でこう呼び止められました。
「後ろ、ちょっとついてるよ」
その言葉を聞いた瞬間、心臓がドクンと鳴り、手が震えました。慌ててトイレへ駆け込み個室で確認すると、ピンク色のナース服には経血が漏れてシミになっていました。
替えの白衣は手元になく、家に取りに行く時間もありません。午後も患者さんの対応が残っていて、どうしたらいいのかわからず、私はトイレの個室で立ち尽くしてしまいました。
窮地を救ってくれたのは…
途方に暮れていた私に、先輩が個室の外から声をかけてくれました。
「大丈夫? これ使って!」
ドアを開けると、先輩は紙袋を差し出してくれました。中を見ると、そこにはきれいに畳まれた替えの白衣が。聞けば、遠い更衣室までわざわざ走って取りに行ってくれたそうです。
「忙しいのにすみません……」
謝る私に、先輩はやさしくこう返してくれました。
「誰にでもあることだよ。着替えたら戻っておいで」
そのひと言に、私は心の底から救われました。
先輩のさりげないやさしさ
恥ずかしい、情けない、消えてしまいたいーー。
さっきまで、そんな気持ちでいっぱいでした。けれど、先輩の言葉を聞いた途端、その苦しさが少しずつやわらいでいったのです。
生理のトラブルは、決して珍しいことではありません。とはいえ、いざ自分のこととなると、周囲に知られたくなくて、ひとりで抱え込んでしまうこともあります。あの日の私も、まさにそうでした。
それでも、困っていることに気づき、さりげなく手を差し伸べてくれる人がいる。あの出来事を通して、私は他人からのやさしさにどれだけ救われるかを知りました。今度は私も、声に出せずに困っている人に気づける人でありたい。そう思えた、大切な出来事です。
生理のトラブルは、多くの女性が経験したことがあると思います。恥ずかしいことでも、弱さでもないのだと、あの日の私は先輩の姿から教わりました。
先輩が見せてくれたような自然なやさしさや助け合いが、もっと当たり前になれば、救われる人はきっと増えるはずです。私もまた、あの日の先輩のように、そっと声をかけられる人でいたいと思っています。
著者:いとうみゆう/30代女性。2020年生まれの6歳の男の子、2024年生まれの2歳の女の子を子育て中のママ。看護師や保健師として医療機関や高齢者施設で勤務。自身の経験をもとに妊娠、出産、育児の体験談を執筆。
イラスト:sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年12月)
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