「送ってあげるよ」という言葉に甘えて
私は車の免許を持っていないため、子どもの習い事には基本的にバスで通っていました。ただ、幼稚園のあとに園庭で遊んで帰りが遅くなってしまった日は、やむを得ずタクシーを利用することもありました。そんな状況を知った同じ習い事のママ友が、「これから毎週送ってあげるよ」と声をかけてくれたのです。
最初は遠慮したものの、「行きも帰りも通り道だから!」と何度も言ってくれたため、お言葉に甘えることに。
乗せてもらうたびにコーヒーを差し入れたり、子どもたちには車内で散らかりにくいお菓子やジュースを準備したりと、自分なりに精いっぱいの気遣いも忘れないようにしていました。
子ども同士のケンカで一変した空気
しかしある日、習い事の最中に子ども同士がケンカをしてしまいました。その険悪な空気は、帰りの車内にもそのまま持ち越されることに……。
いつもはにぎやかな車内ですが、喧嘩の一部始終を見ていた親同士もどことなく気まずく、その日は会話をする気力も起きないまま、よそよそしい雰囲気になってしまいました。
ほんのささいな出来事であっても、密室という近い距離感では関係性に大きく影響することを痛感し、居心地の悪さを強く感じてしまったのです。
それ以降、私は子どもと「習い事の日はまっすぐ帰る」と約束し、再びバスで通うことにしました。ママ友は今でも「また送るよ」と言ってくれますが、「子どもがバスに乗るのが好きで」とやんわりお断りしています。
親切は本当にありがたいものですが、距離が近い関係だからこそ、小さなトラブルが気まずさに直結することもあります。「あのとき少し無理をしてでも断っていれば……」と後悔した経験から、どんなにありがたい厚意であっても甘えすぎず、自分なりの適切な線引きを大切にしたいと思うようになりました。
著者:田中幸子/30代女性。2020年生まれの子と毎日にぎやかに過ごしつつ、文章を書く仕事をしています。
イラスト:キヨ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年5月)