病院帰りにぼうぜん…いつものタクシー乗り場が空
週末のある日、大学病院での検査が長引き、帰りがすっかり遅くなった私。いつものように、病院のすぐ前にあるタクシー乗り場へ向かうと、待機しているはずのタクシーが見当たらないのです。大通りの方向へ目を凝らして見ましたが、一向に来る気配もありません。
私は看板に記載されていた、いつも利用しているタクシー会社の番号に電話をかけました。10回ほどのコールでやっとつながり、「大学病院まで小型をお願いします」と伝えると、「今、全部出払っているから、しばらくしてからまたかけてください」と言われました。
思い当たるほかのタクシー会社に電話をかけても同じ状況。週末の夕方は、混雑でタクシーがつかまりにくいことを、私はこのとき初めて知ったのです。寒風が吹き乗り場のベンチは冷たく、私は厚めの靴下にすればよかったなと後悔したものの、仕方なく、そのまま待ち続けました。
お人好し?でもドンマイ!諦めずに待ち続ける
ほどなくして、病院の出入り口から、3名のご家族が、タクシー乗り場にやってきました。私は「週末で混んでいて、しばらくタクシー来ないみたいです。どちらまでですか?」と声をかけました。どうやら、自分よりもかなり遠方まで帰るようです。私は男性の切なそうな顔を見て、次にタクシーが来たら、こちらの方たちに譲ろうと決めました。
しばらくして、1台が乗り場に到着。私は「こっちは新幹線に乗れば、わりと近いので、お先にどうぞ」と譲ります。男性は「えっ、それは申し訳ない」と驚きつつも、ほっとした様子で「ありがとう、あなたも気を付けてね」とタクシーに乗り込み、帰っていきました。
私はまた待ちぼうけです。日が落ちて、さすがに体と足は冷え、手もかじかんでいます。「お人好しなことしてしまったなぁ」「今夜は何時に帰れるかな」と、星を眺めながら頭の中で独りごとを言ってしまいました。私は諦めず、各タクシー会社に、かわるがわる電話をかけ続けたのです。
ダメもとの観光タクシー…「すぐ行けるよ!」
やがて、電話をかけることにも疲れ始めます。そして、ふと看板に掲載されていた観光タクシーが目に止まりました。通常のタクシーではなく、貸切で観光するためのタクシーです。「無理だろうな……」と思いつつ、それでもわらにもすがりたかった私は、ダメもとで電話をかけてみることにしました。
すぐに電話がつながり場所を伝えると、「あ、今、大学病院のすぐ近くで客を降ろしたから、すぐ行けるよ」との返事が……。私は腰が抜けるくらいほっとしました。もう午後7時近くになっています。辺りはすっかり暗くなり、週末のにぎやかな街の様子を感じる時間。私は、やっと家に帰れる! と心の中で喜びました。
観光タクシーは、言葉通り5分ほどでやって来ました。私が乗り込むなり、運転手さんは「今日は混雑してて、ごめんなさいね。どれくらい待ってたの? ここは寒かったでしょう」と笑顔で話しかけてきます。何げない言葉でしたが、さりげなく気づかってくれ、寒さに震えていた私は思わず涙が出そうなりました。
さらに「車内をあったかくしてるから。寒かったら遠慮なく言ってね」とやさしいいたわり。新幹線の駅までの道中、運転手さんとの会話を楽しみながら、待ちくたびれて凍えていた私の心と体が、芯から温かくなっていったのを覚えています。
まとめ
街の週末の混雑は想像を上回り、あまりタクシーを利用しない私は、油断していました。人が多い週末の夕方は、タクシーも大忙しでしょう。しかし、お客もタクシーがつかまらず大変だということに思いを至らせ、こんなふうに身に染みる接客をしてもらったのは初めてだったかもしれません。
運転手は駅に着いて降りるときも、「慌てず気を付けてね」と言葉を添えてくれました。今回の出来事で、忙しさ中でもさりげない気づかいを忘れない、人の温かさをしみじみと感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:雪嵐 ルイ/40代女性。高齢の母とラブラドール犬との3人暮らし。酒は飲めないが、酒にまつわる香りを好む。ある一つの酒のにおいが好きな香りフェチ。
イラスト:エェコ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)
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