自分へのご褒美だった高級寿司店
当時の私は、仕事中心の毎日を送っていました。忙しくて大変なことも多かったのですが、「次のお寿司を楽しみに頑張ろう」と思うことで乗り越えられていた気がします。
私が通う寿司店は、カウンター数席だけの小さなお店。大将は職人気質ですが気さくな人で、旬の魚や日本酒について丁寧に教えてくれました。
そんなお気に入りのお店へ、ある日、当時付き合っていた彼と記念日ディナーで行くことに。彼も「ずっと来てみたかったんだよね」と楽しみにしてくれていて、私もうれしくなっていました。
酔った男性客が突然!
その日、店内にはかなり酔った男性客がいました。40代くらいの男性で、「なんで生ガキないの?」「酒の種類少なくない?」と、大きな声で文句ばかり。
大将も最初はやんわり対応していましたが、男性客はどんどん態度が大きくなっていきました。嫌な空気だな……と思っていると、突然その男性が私たちのほうを見て鼻で笑ったのです。
「こんな若いカップルが来る店なんて、たかが知れてるよな。なに、SNSに載せるために来たの?」
その言葉に、私は一瞬、頭が真っ白になりました。自分たちを見下されたことも悔しかったのですが、それ以上に、大好きなお店までバカにされたように感じてしまったのです。
彼も気まずそうな表情を浮かべ、店内には重たい空気が流れました。
大将のひと言で迷惑客が…
するとそのとき、それまで穏やかだった大将が、静かな声で言いました。
「申し訳ありませんが、常連のお客様に失礼な発言はご遠慮ください」
どうやら男性は、私たちのことを“一見客”だと思っていたのでしょう。その言葉を聞いた瞬間、男性の表情がわずかに固まりました。さらに大将は、男性に向かって「お勘定は結構ですので、本日はお引き取りお願いします」と、丁寧に頭を下げたのです。
カウンター席はシーンと静まり返り、男性はさっきまでの勢いを失ったように、「……なんだよ」と小さくつぶやきながら荷物をまとめ始めました。そして、逃げるように店を出ていきました。
重たい空気が流れる中、大将は私たちに向かって「せっかくの大切な日に、嫌な思いをさせてしまって申し訳ありません」と、深く頭を下げました。そして、私の好きな日本酒と、おまかせのつまみを「サービスです」と、そっと出してくれたのです。
大将の対応に、彼も「素敵なお店だね」と感動した様子で、私は胸のモヤモヤが少しずつ晴れていくのを感じました。あの日、大将の対応を見て、知識や経験をひけらかすよりも、その場にいる人みんなが気持ちよく過ごせる空気を作れる人のほうが、ずっと素敵だと感じました。
私自身も、あの大将のように、周囲を自然に気づかえる大人でありたいと感じた出来事でした。
著者:大野肉美/40代女性・2015年、2019年生まれの女の子を持つ母。趣味はK-POPや音楽活動。日常生活のクスっと笑えるエピソードを読んだり聞いたりするのが大好き。モットーは「一日一笑」。
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年9月)
※AI生成画像を使用しています
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