サプライズで向かった先は
その夜、彼は行き先を明かさないまま、「少し遠いけど、一緒に行きたい場所があるんだよね!」と言って、車を走らせました。
数十分後、到着した場所を見た私は、思わず言葉を失いました。そこは、以前に私が「人混みが苦手だから行きたくない」とはっきり伝えていた、イルミネーションで有名な施設だったのです。
一方の彼は、「サプライズだよ!」と誇らしげに笑っていました。私とのやりとりを忘れていたのか、それとも自分が行きたい気持ちを優先したのかはわかりません。ただ、私は素直に喜ぶことができませんでした。
素直に喜べなかった理由
私は戸惑いを抱えたまま、ひとまず中に入ることにしました。彼は終始楽しそうに写真を撮り、私の手を引きながら歩いていきます。
イルミネーションはきれいでしたが、やはり人は多く、私は次第に疲れてしまいました。数時間後、車内に戻るころには、気持ちも体力もすっかり消耗していました。
そんな私の様子を見て、彼は「楽しくなかったの?」とひと言。私は迷いましたが、このまま黙っていても伝わらないと思い、勇気を出して本音を伝えることにしました。
「ここは人が多いから苦手だって、前に話したよね。こういうサプライズは、申し訳ないけど……私はあまりうれしくない」
そう伝えると、彼は何も答えずに車を発進させたのです。
本音を伝えると…!?
しばらく沈黙が続いたあと、彼は私の言葉に腹を立てたのか、「じゃあ俺は誰と行けばいいわけ? ほかの女と行けってこと?」と言い放ちました。
私はすぐに、「そういう話じゃないよね?」と返しました。けれど彼は舌打ちし、「もういいよ。連れてきてもらって文句かよ」と言って、一方的に会話を終わらせてしまったのです。
その後、高速道路を降りると、彼はすぐ近くにあった駅の前で車を停めました。そして、「降りて。ここからはひとりで帰って。せっかくのデートが台無しだよ」と言い、振り返ることなく走り去ってしまいました。
この夜、私は怒りよりも、疲れと虚しさを感じました。彼に悪気はなかったのかもしれません。けれど、サプライズという形であっても、苦手だと伝えていた場所へ連れて行かれるのはつらいものです。
相手を喜ばせたい気持ちがあっても、自分の「楽しい」を押しつけてしまえば、思いやりとは少し違うものになってしまうのだと感じました。サプライズをするときこそ、相手が本当に喜んでくれるかどうかを考えることが大切なのだと、今でも思い出す出来事です。
著者:榊原愛七/30代女性・1児の母。看護師・カウンセラー兼、恋愛エピソードを執筆するライター。
イラスト:はせがわじゅん
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年2月)
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