「パパ…」娘のひと言に目が泳ぐ!?
私は、小学1年生の息子と年少の娘の育児、さらに家事もすべてひとりで抱え、加えて私自身の在宅の仕事もこなしています。夫は週2回ほど在宅ワークですが、自宅にいるときも、私がどんなに忙しそうにしていても手伝おうとはしてくれません。
夫は仕事に対するプライドが非常に高く、「家計を支えているのは自分だ」という自負が強い人です。そのため、家事や育児はすべて私の役割であり、自分の仕事よりも優先度の低いものと考えている節がありました。また、自分の仕事のペースや予定を他人にコントロールされることを極端に嫌う性格。そうして自然とできあがってしまった完全なワンオペ状態に、私は限界を感じていました。
その日も、夫は在宅ワークで朝から家にいました。しかし私の朝の時間は1分1秒が戦いで、心身ともに疲れ果ててしまうのが常です。パジャマ姿のままソファでスマートフォンを眺めてくつろぐ夫の姿を見て、「在宅で始業まで時間があるんなら、週に1度だけでいいから保育園の送迎をお願いできないかな?」と、必死の思いを滲ませて伝えました。
すると夫は、自分の仕事の領域に踏み込まれたと感じたのか、あるいは自分の時間を奪われると察知したのか、突然顔を真っ赤にして怒鳴ってきました。「俺に仕事以外でタスクを増やすな! お前が勝手にキャパオーバーしているだけだろ! 俺は仕事が忙しいんだ」と言うのです。夫からの想定外の拒絶に、私は言葉を失いました。自分の子どもを育てることを、自分の仕事を邪魔する「外部からの押し付け仕事」のように表現する身勝手さに、私はただ悲しみと落胆を覚えるしかありませんでした。
そのとき、朝食を食べながら私たちのやり取りを黙って見ていた娘が、ソファーに向かい夫の前に立ちはだかります。そして「パパ、私を送るのにそんなに時間はかからないよ。ママは毎日してるよ。あのさぁ、ママは私を送る前にも、洗濯物を干して、ごはんの準備も全部してるんだよ」と言ったのです。
夫は普段から娘には非常に甘く、娘から嫌われたくない、格好いい父親でありたいという気持ちが人一倍強い性格でした。だからこそ、妻である私からの要望には「仕事の邪魔をするな」と反発できても、大好きな娘から事実を突きつけられたことで、言い訳ができなくなってしまったのです。
純粋な表情で真っ直ぐに見つめ、淡々と告げる娘の姿に夫は言葉を失い、目を泳がせています。夫は言葉に詰まり、視線をあちこちに動かして動揺していましたが、娘の手前、父親としてのプライドを保ちたかったのでしょう。「いや、なんだ。その……」と口ごもりながらも、そしてついに「うん、そうだよな」とうなずき、意を決したかのようにパジャマを脱いで着替えを始め、その日は娘を保育園に送ってくれました。
この日を境に、夫は週に1回、娘の送迎を担当するようになりました。最初は娘にいいところを見せたい、褒められたいという動機から始まったようですが、実際に送迎を経験することで、育児の大変さや段取りを少しずつ理解していったようです。最近では、朝のゴミ出しも自発的に行ってくれるようになりました。
送迎などをする際、娘にアピールするかのように「パパはちゃんとやってるでしょ」という態度が出ているのは気になりますが、家事や育児を「自分の仕事ではない」と切り捨てていた以前に比べれば、大きな進歩だと歓迎しています。夫を少しでも変えてくれた娘には、本当に感謝しています。
パートナーが非協力的な場合、夫婦で話し合うよりも、子どもの純粋な言葉が相手の心に深く刺さる場合があると実感しました。家族がワンチームであることを意識してもらうために、子どもの視点を通して現状を共有していくことも、一つの手だなと学べた出来事でした。
著者:井島りほ/30代・ライター。年少の女の子と小1男の子を育てるママ。おしゃべりが大好きで寝るのが苦手な兄妹と、にぎやかな毎日を過ごしている
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)