突然の裏切りと冷酷な宣告
ある日の閉店後、厨房で片付けをしていると、妻が「話がある」と不敵な笑みを浮かべてやってきました。その背後には、なぜか義両親と、一年ほど前から店を手伝い始めた僕の弟がニヤニヤしながら立っています。
妻は僕の目の前に離婚届を突きつけ、衝撃的な事実を告げました。
「離婚してほしいの。実は私のお腹には、彼の子どもがいるの」
あまりのことに言葉を失う僕に、義父が追い打ちをかけるように言いました。
「これまで店を切り盛りしてくれたことには感謝する。だが、これからは娘の新しい結婚相手になる弟くんに店を継がせることにした。悪いが出ていってくれ」
どうやら僕に隠れて、数ヶ月前からこの追い出し計画を身内で進めていたようです。
さらに、弟は僕を小突きながら、勝ち誇った顔で言い放ったのです。
「前々から兄貴って要領悪いなって思ってたんだ。店のことに必死でこんなかわいい奥さんはほったらかしだし、ラーメンのスープ作りも無駄に手間がかかってる。これからは俺のやり方でやっていくからさ」
義母も「そうよ、メニューもリニューアルするからその邪魔なスープ処分してね」と同調し、4人で僕をあざ笑いました。
秘伝のスープをすべて処分
僕がこだわり抜いて作ったスープは、素材の良さを最大限に生かし、丁寧にとった昔ながらの中華そば風のスープです。透明感のある豚骨清湯(ちんたん)に、キリッと醤油が効いた上品な味わいが自慢で、これが多くのお客様に愛されていました。確かに手間はかかりますが、下処理に手を抜かないからこその味わいです。
長年、家族のためにと店を支えてきた僕を、身勝手な理由で使い捨てにしようとする妻と弟、そして義家族たち。あまりの理不尽さに、僕の心の中で何かがプツンと切れました。
「……分かりました。処分しますね」
僕が静かに告げると、彼らは「話が早くて助かるわ!」と大喜び。
僕は厨房にある巨大な寸胴鍋に歩み寄り、中に並々と入っていた自慢の豚骨清湯スープを、淡々と処分しました。
まるで僕がここにいることなんてお構いなしに、リニューアルと初孫の誕生について盛り上がる彼らを横目に、僕の心は急速に冷えていきました。
そして、僕は離婚届を受け取ると、そのまま荷物をまとめ、義実家のラーメン屋を後にしました。

自業自得の結末
その後の離婚手続きでは、妻や義家族が往生際悪くゴネてかなり揉めました。しかし、僕はすぐに弁護士を雇って徹底抗戦。不貞の慰謝料はもちろん、店から一方的に排除された件や、婚姻中に築いた財産についてもきっちり整理し、取れるものは容赦なく毟り取ってやりました。
風の噂によると、僕が去った後のラーメン屋は最初こそリニューアルで盛況だったものの、現在は悲惨な状況になっているそうです。
弟は僕の繊細なスープとはまったく違うタイプの「ガツンと系ラーメン」を出し始めたとのこと。
しかし、せっかくついていたお店の常連さんたちからは「重すぎて口に合わない」「ギトギトしていて臭みがある」と大不評。ネットの口コミ評価も燦々たるもので、客足は一気にとだえてしまいました。
今では毎日閑古鳥が鳴いており、店は潰れる寸前のようです。妻と弟、そして義両親は、互いに責任をなすりつけ合って毎日怒鳴り合いの喧嘩をしているそうです。
一方の僕は、応援してくれていた仲間の支えもあり、別の場所でつい最近、新しく自分のラーメン店をオープンすることができました。僕のスープの味を覚えていてくれたお客様がわざわざ遠方から足を運んでくださることもあり、日々の仕込みにも自然と気合が入ります。
あのとき、自分勝手な人たちに執着せず、すべてを捨てて正解だったと心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。