息子を犯人扱いする女性
息子が5歳のころ、家族で市内の大きな花火大会へ行ったときのことです。打ち上げ開始を待ちながら屋台を楽しんでいると、突然、40代くらいの女性がこちらへ駆け寄ってきました。
「その子! 私の財布を盗ったでしょ!」
女性は大勢の人がいる中で、息子を指さしながら大声を上げたのです。突然のことに、私たちは何が起きたのかわからず戸惑いました。女性は興奮した様子で、さらに続けます。
「さっきまで財布があったの! この子が近くに来た後、なくなったことに気づいたの!」
周囲の視線が一斉に私たちへ集まりました。息子は怖くなったのか、私の後ろに隠れて泣き始めました。私は女性に、何かの勘違いではないかと尋ねました。しかし女性は、「子どもだからって許されないからね!」と怒鳴り、聞く耳を持ちません。
騒ぎを聞きつけ、30代くらいの男性警備員が駆けつけました。警備員は女性から事情を聞き、まずは一緒に財布を探そうとしました。
ところが女性は、「絶対にこの子が持っている!」と言い張り、息子のリュックの中を見せるよう求めてきたのです。息子は泣きながら嫌がりましたが、疑いを晴らすため、仕方なくリュックの中を見せました。けれども財布は入っていませんでした。
それでも女性は納得せず、「どこかに隠したんじゃないの?」と息子を疑い続けます。周囲には重苦しい空気が流れました。すると、別の警備員がこちらへ駆け寄ってきました。
「財布が見つかりました」
女性はホッとした表情を見せました。しかし、警備員が続けて告げた言葉を聞き、周囲は静まり返りました。
「旦那さんのポケットに入っていたそうです」
財布は、女性の旦那さんのズボンの後ろポケットに入っていました。警備員の説明によると、旦那さんはレジャーシートの上に置かれていた財布を見つけ、盗まれないよう自分のポケットに入れたそうです。しかし、酒に酔っていたため、そのことを忘れていたといいます。
財布が見つかっても、周囲は静まり返ったままでした。近くにいた人からも、息子に謝るよう女性を促す声が上がりました。女性は顔を赤らめ、小さな声で息子に謝りました。
「ごめんなさい……」
しかし、息子はすっかりおびえてしまい、私の後ろから出てこようとしませんでした。
幸い、息子は花火が始まるころには少しずつ落ち着きました。夜空に上がる花火を見ながら、「きれいだね」と笑顔を見せてくれたため、私もようやくホッとしました。
焦っているときほど、誰かを責める前に事実を確かめることが大切なのだと痛感した出来事です。
著者:橋元まい/40代女性/2014年生まれの長女、2017年生まれの長男、2021年生まれの次女を育てる3児の母。介護福祉士としてデイサービスに5年間勤務後、出産・育児を機に在宅ワークへ転向。現在はライティングやSNS運用に携わりながら、子育てと仕事の両立に奮闘中。趣味は旅行とカフェ巡り。家族とのお出かけが大好きで、子どもたちとの日常や育児中の体験を中心に執筆している。
イラスト:きりぷち
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)