消えた1万円の高級ステーキ
結婚記念日に、思い切っていつもより奮発して、近所のお肉屋さんで1万円の高級ブランド黒毛和牛のステーキ肉を買ってきました。帰宅後は夕食までの準備でバタバタしていて、焼く前に常温に近いほうがいいだろうと、お肉を買ったときの袋のまま、とりあえずキッチンの作業台に置いていたのです。
その後、10分ほど家の片付けをして、お肉から目を離していました。ひと通り家事を終えてキッチンに戻り、さぁ食事の準備をしようと野菜を冷蔵庫から取り出します。すると、出しておいたはずのお肉がありません。あれ、どういうこと!? 家にいるのに盗まれたの……? しかも、いったい誰に。頭の中は一気にパニックです。
そのときです。目の前をダッシュしていくわが家の愛犬の姿が飛び込んできました。見ると、口にはお肉を入れていたビニール袋の持ち手が。中には、さっき買ってきたばかりの高級ステーキ肉のパックが入ったままです。愛犬は小型犬なので、キッチンの高さには届くはずがないと思い込んでいました。あとから考えると、近くにあった椅子によじ登り、そこから前脚を伸ばして袋ごと引きずり下ろしたようです。まさかそこまでするとは思わず、頭が真っ白になるとは、このことです。
「それだけはダメー!」
そう叫びながら必死で追いかけ、なんとかソファの裏に追い詰めました。愛犬は「絶対に渡さない」とでも言いたげな強い目でこちらをにらんでいて、正直、これは長期戦になるかもしれないと覚悟したほどです。ところが、大好物の犬用おやつを目の前で振ってみせると、あっさり袋をポロッと落とし、物々交換に応じてくれました。
幸い、愛犬がくわえていたのは袋の持ち手だけで、お肉のパックは中に入ったまま。ラップも破れておらず、犬の口にも触れていませんでした。ほっとして、一気に力が抜けたのを覚えています。
その後、無事に焼き上がったステーキを夫と食べながら、「1万円のお肉より100円のおやつを選ぶなんて、うちの子は庶民派で助かったね」と2人で大笑いしました。あのときは本当に冷や汗をかきましたが、今ではすっかり笑える記念日の思い出になっています。豪華なごちそうよりも、こういうドタバタのほうが、あとから何度も思い出して笑ってしまうものなのだなと、しみじみ感じています。
著者:真山万央/30代女性/4歳の娘の母。お菓子作りが趣味。週末は家族でピクニックを楽しんでいる
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)