「帰ってこい」と言っていた母が、出発の朝に言った言葉
上の子が2歳になるころ、私たち家族は実家から車で3時間ほど離れた場所に住んでいました。そのころ、母から電話がかかってくるたびに言われていたのが「全然帰ってこないなんて親不孝者だ」「孫にも会わせてくれない」という言葉です。悪気があるわけではないとわかってはいても、責められているようで気持ちは重くなる一方でした。それでも、母に会わせてあげたい気持ちはありましたし、何より「そこまで言うのなら」と思ったのです。
そこから、帰省の準備が始まりました。仕事の予定を調整し、子どもの生活リズムも考えながら、夫とも何度も相談して、ようやく日程を決めます。高速代とガソリン代を合わせれば、それなりの出費になります。家計に余裕があったわけではありませんが、必要な出費だと納得して、少しずつ準備を進めていきました。
ところが、出発当日の朝のことです。
荷物を車に積み込もうとしていたところに、母から電話がかかってきました。
「やっぱり来ないで。お金がかかるから」
突然そう言われて、意味がすぐには飲み込めませんでした。理由を聞くと、食費も光熱費もかかるし、いろいろ準備するのが大変だから、とのこと。あれほど「帰ってこい」と言っていたのに、今度は「お金がかかるから来るな」と言う。頭が真っ白になって、しばらく言葉が出てきませんでした。交通費もかけるつもりでしたし、そのために予定まで空けていたのです。悲しいというより、自分のしてきた準備が何だったのだろうという気持ちの方が強かったように思います。
結局、その帰省は取りやめにしました。
それ以来、母から「帰ってこい」と言われても、その言葉をそのまま受け取ることはしなくなりました。本当に来てほしいのか、無理をしていないか、日程が近づいてからも一度確認する。そんなやり取りを挟むようになったのです。
迎える側にも、費用や準備の負担があることは理解しています。母には母の事情や、言い出しにくい気持ちがあったのだろうとも思います。それでも、あの朝の電話は今も忘れられません。
お互いが気持ちよく過ごすためには、「帰ってきてほしい」という言葉だけで済ませず、費用や準備についても本音を先に伝え合うことが必要だったのだと思います。今は、母と少し距離を置きながらも、以前より正直に話せるようになった気がしています。
著者:佐原かなみ/30代女性/1歳、5歳の姉妹を育てる2児の母。医療機関に勤務後、出産を機に退職。
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)
嘘エピソードも大概にせぇよ!