今までにない話題を持ってくるお客さま

ある商業施設内で働く私が体験した話です。商業施設には10店舗ほどのお店が入っていて、来店するお客さまは60代くらいの方が多め。話好きの人が多いのか、どこのお店でも楽しそうな話し声が響いていて、買い物に来たのか話に来たのかわからないくらいです。
ある日、私の働くお店に女性のお客さま、Aさんがやって来ました。商品を1つ握り私が立つレジへ来て、お会計が終わったと思いきや世間話が始まりました。「私の住んでいる家の庭は広くて、雑草の手入れが大変なの」「今日は野菜が安くていっぱい買っちゃった」など、Aさんの話に私はひたすらうなずいていました。
すると、Aさんが先ほどまでの世間話から一転して、自分の夫婦生活の話を始めたのです。急に話す内容が変わったことに驚く私をよそに、Aさんは話を続けていました。
「私たち夫婦は70代目前なんだけどね、一緒に寝てると夫が夫婦生活に誘ってくるの」
「私はね、もともとそういうの苦手だから、誘われないように別の部屋で寝てるのよ」
と聞いてもいないのに、次々に話してくるAさん。ひたすら話して満足したのか「じゃあ、また来るわね」と言って帰り、私は「やっと終わったか……」とホッとしていました。
Aさんの予想外の事実発覚
10分後、帰ったはずのAさんの声が聞こえてきました。また近くのお店でもAさんは話をしていたのです。「あれ、帰ったんじゃないの?」と思いつつも、どんな話をしているのか気になり、私はこっそり聞き耳を立ててみることに。
すると、私がさっき聞いた話とまったく同じ話をしていたのです。その店員さんは「えー、そうなんですね」と話を受け流している感じでした。「よっぽど話したかったのかな?」とつぶやきながら、私は自分の持ち場に戻ることに。
それから数日後、忘れたころにまたAさんがやって来ました。その日は特に買い物はせず、話を始めたのです。前回同様、夫婦生活の話でした。
「夫が今度旅行に行こうって誘ってきたのよ」と言ったので、私は「あら、よかったですね」と言うと、Aさんは「旅行って言ったら、やっぱり泊まりじゃない? そこで夫婦生活に誘われちゃうでしょ」と、私の返答に被せ気味で話してきたのです。
このまま話を続けても同じような話を続けられかねない! と思った私は「大変ですねー」などと言って、うまく話を終わらせることができました。その日もAさんは、ほかのお店で同じ話をして回っているようでした。
あれから来なくなってしまい…
急に夫婦生活の話をするようになったAさんのことが気になり、長年勤めているスタッフBさんに、Aさんについて聞いてみることに。
Bさんに「Aさん夫婦ってもうすぐ70歳なのに元気で仲が良いんですね」と言うと「Aさんの旦那さん、たしか数年前に亡くなってるはずだよ」と言われ、まさかの事実に私は何も言葉が出ませんでした。
「本当だよ、だってAさんは私の実家の近所に住んでるから。私は両親からAさんの旦那さんが亡くなったことを聞いたの」とBさん。その後も2人でAさんの旦那さんについて話していると、後ろから誰かが近づいてくる気配を感じました。
振り返ってみるとAさんが私たちのそばに立っていたのです。私はAさんとあいさつしたものの、その日は何も話をせず、ほかのお店にも立ち寄らずに帰って行きました。
その日から長らくAさんを見かけなくなり、ほかのお店のスタッフに「最近、Aさん見かけました?」と聞いてみても「見てないですね」との返答。Aさんはあの日以降、この商業施設には来なくなってしまったのかもしれません。
◇◇◇◇◇
Aさん自身が経験して話していることだと思っていたので「そういう夫婦もいるんだなぁ」と思っていたのですが、まさか旦那さんがもう亡くなっているなんて予想もしませんでした。私たちがその事実を知らないと思って話していたのか、それともAさんの中では何か別の思いがあったのか……。どちらにせよ、あまり他人のことは詮索するべきではなかったと反省する出来事でした。
あの日以降、Aさんを見かけることがなくなってしまいましたが、どこかで以前のように楽しそうに話をしながら、元気でいてくれたらいいな……と、仕事をしながらも時々Aさんのことを思い出します。
著者:勝 さとみ/30代・ライター。2015年生まれと2020年生まれの2人姉妹を育てるシンママ。肌の悩みが多く、よくSNSでおすすめのスキンケア情報などを収集して試して、日々美肌研究中!
イラスト:エェコ
退職後、人柄が変貌した隣人

実家の隣に住むご夫婦は、年齢も自分の親と同世代で、小さいころから知っていたため、顔を合わせるとあいさつをしていました。
奥さまは愛想がよく、私に子どもが生まれてからは、実家に子どもを連れていくと「大きくなったね」と笑顔で声をかけてくれることもありました。ご主人はそれほど愛想がよいタイプではなく、退職されてからは、実家に帰ると玄関先で花に水をやったりする姿をよく見かけるので、あいさつをしても、会釈を返してくれる程度でした。
しかし、あるときから徐々にあいさつをしても顔を見ても会釈さえ返してこなくなりました。こちらはさほど気にはしていませんでしたが、外に出るとご主人が玄関先に立っていて、こちらを見つけるとギロリとにらむようなことが増えたのです。
私の家族も「あの人、最近よく外に立ってるね」と気にはしていましたが、顔を合わせるとけげんな表情をされたり、舌打ちをされたりするようになり、少し不安も覚えました。奥さまは相変わらずで特に変化は感じませんが、ご主人は明らかにこちらに対しての態度が悪くなってきていたのです。
実家のガレージをのぞき見するのに遭遇
仕事の都合で子どもを実家に預けることが増え、私自身も実家に出入りする機会が増えたころから、隣のご主人が玄関先に立ち、まるで周囲を見張っているかのように、にらみを利かせることが多くなりました。
そんなある日、実家のガレージで子どもを自転車の後ろに乗せようとしていたところ、カサッと物音がしたため、猫でも通り過ぎたのかなと振り向くと、なんと隣のご主人が塀から顔を出してこちらをのぞき見していたのです!
私はびっくりして思わず「ギャー!」と叫んでしまったのですが、その声にびっくりしたのか、のぞき見していたところを見られて気まずかったのか、すぐに家の中へ。その後も、出窓に顔をくっつけて外を凝視したり、わが家だけでなく近隣の家々の玄関先をのぞいている姿も見られるようになったのです。
私は母に、家の戸締まりをしっかりすること、止めている自転車には鍵をかけることなど、念のため注意するよう伝えました。
あるときを境にぱったりと気になる行動が終了
隣家のご主人の気になる行動はさらに目立つようになり、家の窓を開けて1人で大声で文句を言うこともあり、不安は増すばかりでした。しかし、近所の同世代の男性にはペコペコしながら愛想よく話をしているのです。
すると、あるときを境にそうした行動がぱったりと見られなくなりました。同時期に母親は近所の人に「最近あの人の姿見ないね」と言われたそうです。どうやら、隣家のご主人の行動は近所でもウワサになっていたようで、近所の人たちも家をのぞかれたり、玄関先にずっと立っている横を通り過ぎたりするのが嫌だったと話していたのだとか。
その後、その行動が止まった理由が判明しました。隣家のご主人と親しそうに話していた近所の人が、奥さまに「旦那さん、いつも玄関に立ってるね。1日中立って何してるの?」とそれとなく聞いたというのです。どうやら奥さまから何か言われたのか、それを境に、私の実家を含む近隣住宅をのぞいたり、窓に顔をつけて外を見たりする行動がぱったりとなくなりました。
◇◇◇◇◇
私の実家や近所の住宅をのぞき見したり、1日中玄関先に立って家の前を通り過ぎる人を凝視したりする行動が目立った隣家のご主人。もしかしたら加齢による変化や体調面の事情があるのかも……とも家族と話していましたが、実際のところはわかりません。現在はそうした行動は目立たなくなりましたが、それでも季節に関係なく朝6時ごろからガレージで大音量のラジオを聴くなど、気になる行動はまだあるようです。
何かトラブルにつながらないよう、私自身も様子を見がてら、実家に顔を出すようにしています。
著者:江口りん子/40代女性・1児の母、夫は現在単身赴任中。会社員とWebライターをしている。高齢出産を経て、体調の変化や疲れなどさまざまなトラブルに直面し、若いころとは違うとつくづく感じる今日このごろ。普段はファッション、推し活、グルメなどの情報収集が趣味。
イラスト:マメ美
まとめ
一見すると理解しづらい行動の背景には、孤独感や不安、生活環境の変化など、本人にしかわからない事情があるのかもしれません。相手の行動をすぐに決めつけず、少し距離を置いて受け止めることで、こちらの不安やストレスが和らぐこともあるのだと感じました。
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※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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