子どものころから、母に「可哀想」と言われ続けてきた優子さん。テストのときも、運動会のときも、母はまず頑張りを認めるのではなく「できなくて可哀想に」と哀れむような言葉をかけていました。
そしてその口癖は、優子さんだけでなく弟・ノボルさんにも向けられていました。ただし、ノボルさんへの「可哀想」は、身の回りのことをさせたくない、長男だから大切にしたいという過剰な甘やかしに近いもの。
母は、ノボルさんが使った物を片付けることさえ「男の子には可哀想」と言い、優子さんに世話を押しつけようとします。その異様な扱いに、ついにノボルさん本人も危機感を覚え始めて……。
俺、このままじゃろくな大人になれない……









自分の世話を何でも優子さんにさせようとする母を前に、ノボルさんは「このままでは自分はダメな大人になってしまう」と不安になります。優子さんは、そう気づけるだけで立派だと弟を励ましました。
危機感を抱いたノボルさんは、やがて寮のある高校へ進学。母は「寮なんて可哀想」「世話をする人がいないなんて可哀想」と最後まで泣いていましたが、ノボルさんは自立し、立派に成長していきます。
一方で母は、料理や掃除をとても丁寧にこなす人でもありました。毎日きちんとした食事を作り、おやつも手作り、家の中もいつもきれいに整えていたため、父や周囲からは“しっかりしたお母さん”に見えていたのでした。
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母は「長男だから大切にしたい」という思いから、ノボルさんだけを特別扱いし、身の回りの世話を優子さんに押しつけていました。しかし、きょうだいの一方だけをひいきすることは、ひいきされた子の自立を妨げるだけでなく、もう一方の子に寂しさや理不尽さを抱かせることにもなります。
また、「あなたにはさせられない」「可哀想」と何でも先回りしてしまえば、子どもが自分で考え、行動する機会を奪ってしまうことも。ノボルさんが母親の偏った愛情に違和感を覚え、自ら環境を変えようと決断できたことは、大きな一歩だったのではないでしょうか。
子どもを思う気持ちが、きょうだいへの接し方の差や、過度な手助けにつながっていないか。親自身が立ち止まって振り返ることも大切ですね。
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山野しらす