朝から漂うサプライズの気配
娘が幼稚園の年長だったときの母の日のことです。その日は休日で、私は少し遅めに起きました。すると、夫と長女はすでに起きていて、部屋はきれいに片付けられ、キッチンからはいい香りが。
どう考えてもいつもと違う、サプライズの雰囲気。そう思いながらも、あえて気づかないふりをして「今日はやけに部屋がきれいだなあ」と口にしてみました。すると長女は、隠しきれない様子でそわそわしながらも、笑顔で「なんでだろうね?」と動き回っていました。
その後、夫と娘は「ピアノのレッスンがあるから」と言って外出し、いつもより少し遅めに帰宅。
玄関で何やらごそごそと準備している音が聞こえ、「きっとカーネーションでも買ってきたのだろう」と思いながら、ここでもそっと見ないふりをしていました。
まさかの花束に驚愕
夕飯の時間になると、2人は朝から仕込んでくれていたカレーを出してくれました。思いがけないごちそうに胸がいっぱいになり、2人の思いに涙がこぼれそうになった私。
そして、長女が待ちきれない様子で飛び跳ねながら、プレゼントを渡そうと夫を急かします。夫がいそいそとクローゼットから紙袋を取り出し、それを長女が大事そうに抱えて私に差し出してくれました。
袋の中は……花束でした。紫や白、緑を基調とした落ち着いた色合いで、とても上品だと感じていたところ……よく見ると、花束の中には、「仏花」である菊の花が。「え? 仏花?」と一瞬、戸惑ってしまいましたが、目の前では、長女が期待に満ちた目でこちらを見ています。
「ママ、うれしい?」と少し不安そうな声。
喜びと学びが入り混じった母の日
結局、私は「う、うれしくて言葉が出なかった。ありがとう!」と大げさに喜んでみせることにしました。長女は安心したように大喜びし、無邪気な笑顔を見ていると、それでよかったと思えました。
ただ夫には、花束に入っていた菊は、いわゆる仏花と言われていることを伝えました。今後、夫が誰かに花束をプレゼントすることになった際など、仏花を入れて相手を困惑させたら……と思うと、伝えておいたほうがよいと思ったのです。
夫は知らなかったようで、少ししょんぼりしてしまいましたが、「花束をくれた気持ちはうれしかったよ」と伝えると、笑顔を見せてくれました。
その後、父の日に長女と一緒に花屋さんへ行き、「これは、お供えのときに使うことが多いお花なんだよ」と、改めて伝えることに。まだ幼かった長女には完全には伝わっていない様子でしたが、こうした経験や知識が、いつかどこかで役に立ってくれるといいなと思います。
完璧ではないけれど、一生懸命に考えて用意してくれた気持ちは、やはり何よりもうれしいものです。少し抜けているところのある夫らしいハプニングのエピソードとして、心に残ったのも事実。知識の大切さを感じつつも、あの日のカレーの味と仏花の思い出は、毎年、母の日を迎えるたびにクスッと思い出しています。
著者:大野肉美/40代女性・2015年、2019年生まれの女の子を持つ母。趣味はK-POPや音楽活動。日常生活のクスっと笑えるエピソードを読んだり聞いたりするのが大好き。モットーは「一日一笑」。
イラスト:Ru
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)
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