自分の息子から食らった反撃
練習に行くと、いつもお子さんの「努力」について周囲に話すAさん。実際、Aさんの息子さんが毎朝5時に起きて5kmも走っていると聞いたときはとても驚き、周囲の保護者も「本当にすごいよね、頑張っているね」と純粋に尊敬していました。
しかしAさんは、練習で顔を合わせるたびに「うちは凡人の子とは覚悟と努力が違うのよ」と、他の子どもたちと比較して周りを下げるような言い方をするため、少しずつ聞いている私たちもうんざりするように……。それでも、Aさんの息子くん自体はとても素直で努力家なため、みんな角を立てずに受け流していたのです。
ある日、Aさんが周囲のママ友に家庭での練習量を聞いて回り、私がターゲットになりました。「お宅はどのくらい練習してきたの?」と聞かれ、「無理のない範囲で、基礎練習を30分ほどしていますよ」と答えると、Aさんは「たった30分!? うそでしょ!? そんなの努力って言わないわよ。生ぬるいし時間の無駄~」と、大声で笑ったのです。
私は、長男が自分の意志でひたむきに毎日欠かさず壁当てをして、練習靴がボロボロになっている姿を知っています。そして何より、Aさんのお子さんの努力も本当に素敵だと思っているからこそ、他人の頑張りを切り捨てるような言い方に、我慢の限界が来ました。
私はAさんの目をまっすぐ見て、「Aさん、息子くんが毎朝走っているのは本当にすごいですし、心から尊敬しています。でも、努力の形や量って、人それぞれだと思うんです。誰かと比べたり、誰かの頑張りを『無駄』と決めつけたりするのは、同じチームの親として許容できません。本人が目標を持ってひたむきに向き合っているなら、どんな形でもそれ自体が立派な努力ですよ」と努めて冷静に言ったのです。
私の言葉に、周囲の保護者たちは一瞬どよめきます。私はいつも保護者たちの隅でひっそり応援しているタイプだったので、誰もまさか私がAさんに言い返すとは思わなかったのでしょう。しかし、その直後「でも、そうよね。私もずっとそう思ってたのよ」と同調する声が聞こえてきて、Aさんは私や周囲の思いがけない反応に目を見開いて立ち尽くしています。
そこへ練習を終えたAさんの息子が駆け寄ってきて、「お母さん、またランニング自慢してるの!? やめてって言ったじゃん!」と声をかけました。続けて「○○くん(長男)、ドリブルがどんどんうまくなってて、さっきコツを教えてもらったんだ。僕のランニングも、○○くんの練習も、みんなそれぞれ頑張ってるのは、一緒に練習してたらわかるんだよ! 誰が頑張ってないとか、誰のほうが頑張ってるとか言ってたら、チームの団結力が崩れるからやめてよね!」とはっきりと言ったのです。
自分の息子が、チームメイトと互いの努力を認め合い、高め合っている姿を見て、Aさんはハッとした表情を浮かべ、静かに黙り込みました。私や周囲のママたちからは「よくぞ言った!」という気持ちで自然と拍手が湧き起こります。Aさんは黙ったまま帰って行き、その後、他人の練習量を笑うような発言をすることはなくなりました。
この出来事を通じて、Aさんの息子くんが言うように、努力の形や量は人それぞれだということを改めて感じました。他の子と比べて優劣をつけることは、子どもたちの純粋な頑張りを傷つけることにもなりかねません。Aさんの息子くんが自らチームメイトの努力を認め、チームの団結を大切にしようと言えたのは、日々の努力を通じて本物の強さを身につけていたからこそだと思います。
子どもたちはピッチの上でお互いをちゃんと見ています。親である私たちも、比べるのではなく、それぞれの頑張りを温かく応援できる存在でありたいと感じた出来事でした。
著者:池田いおり/30代・ライター。11歳と6歳の活発な男の子を育てるママ。仕事と子育てに奮闘しつつも、自分の時間を何とか確保してリフレッシュしている。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年2月)