支援センターでやりたい放題の親子
娘を連れてよく訪れていた支援センターでは、子どもたちが決まった内容で一緒に遊ぶイベントが、定期的に開催されていました。ある日、粘土遊びをするイベントに参加することにした私と娘。とても楽しみにしていたのですが、そこで思わぬトラブルに巻き込まれます。
イベントには数名の親子が参加していました。はじめはみんなで楽しく粘土遊びをしていたのですが、近くにいた娘と同じ3歳くらいの男の子が急に立ち上がり、笑いながら他の子どもの粘土を取って投げたり、作っていたものをつぶしたりと暴れ始めます。
先生がすぐに「〇〇くん、お友だちのものを壊したらダメだよ」と注意したものの、男の子の母親はスマホに夢中。そしてチラッと男の子の様子を見て「まぁ~、本当にわんぱくねぇ~」とにっこり。続けて先生に「私ね、子どもは自分の好きなことをしてのびのび過ごすのが一番だと思っているの! 上の子たちもそうだったでしょ?」と強い口調で圧をかけたのです。
実は男の子の母親は、少しでもスタッフに注意されると激しくクレームを入れることで有名で、過去にもトラブルがあったとのこと。兄弟で長く通っていることもあり、先生たちも「でも、お友だちが困っていて……」となんとか対応しようとしつつも、母親の強い態度に押されて言葉に詰まり、困り果てている様子でした。
泣き出す子どもも出てきて場の雰囲気が悪くなる中、「私から何か言った方がいいのかな……」と迷っていたそのとき、娘が「ねぇ、この男の子かわいそうだよ」と声をあげました。粘土を壊されたお友だちではなく、壊している男の子のことをかわいそうと言う娘。不思議に思って「どうして?」と聞くと、「だって、ママずっとスマホ見てるよ。あの子、ママに見てほしいんじゃない?」と言いました。そして「先生がね、『見てほしくて、いたずらしちゃう子もいるんだよ』って言ってたの」と続けました。
自分の子どもを「かわいそう」と言われた母親は「なんて失礼な子なの!」と顔を真っ赤にして怒り出しました。しかし、娘のまっすぐな言葉に背中を押されたのか、先生の表情が変わりました。「お母さん、やっぱり違います。お友だちの作品を壊す行為は絶対にしてはいけないことですし、わんぱくで済まされるレベルではありません。私たちももっとしっかりお伝えすべきでした。このままでは〇〇くんのためになりません」と毅然とした態度で伝える先生。
すると、他の保護者から励ますような小さな拍手が起こりました。母親は顔を真っ赤にしたまま無言になり、「まだやりたいのに!」と暴れる男の子を連れて、急いで支援センターを出ていきました。
その後、先生は「〇〇ちゃん(娘)、ごめんね。大事なことに気づかせてくれてありがとう」とひと言。もちろん、どれだけ寂しくてもお友だちの作品を壊す行為自体は間違っていて、許されることではないと思います。とはいえ、乱暴な行動の裏にある男の子のSOSを感じ取っていた娘には、とても感心しましたし、かわいそうと言った理由に納得しました。
この一件を通じて、子どもの問題行動を「のびのび」「わんぱく」という言葉で片づけてしまうことはよくないと、改めて感じました。今回、男の子が暴れたのは娘が言ったように「寂しいから」なのかは実際のところわかりませんが、子どもが発するSOSに気づき、向き合うことは大切だと私も思います。そして、ダメなことはダメとはっきり伝える周囲の大人の存在も、子どもの成長には欠かせないと感じました。
3歳の娘のひと言が先生の背中を押したように、子どもの純粋な言葉は時に大人が見落としていた本質を突くことがあるのかもしれない——そんなことを感じた出来事でした。
著者:伊東杏/ライター。わが道を行く7歳の息子と、ひょうきんな5歳の娘を育てる母。夫は理屈屋。「ていねいな暮らし」に憧れ、いつか自分も……と夢見ている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年2月)