AIマウントをする子どもにプロの洗礼
長男より1歳上の義甥Aくんは、有名塾でトップクラスの成績であることを鼻にかけ、日ごろから周囲の大人を見下すような態度をとっていました。最新のタブレットを手に持ったAくんは、図鑑を読んでいた長男に対し「動物図鑑? そんなの読んでて楽しい?」と鼻で笑い、さらに、「おじさんもさ、子どもにそんなアナログなことさせてていいの? おじさんが言ってた『パソコンでデータ入力する地味な事務』なんて、真っ先にAIに取って代わられる仕事だよ? 親子で時代遅れになっちゃうよ」と、長男の返事も待たず、夫に言い放ちました。Aくんのママ(義姉)も「そうね、今の時代、効率が大事よね。単純なデスクワークなんてすぐ無くなるわよ」と同調する始末です。
あまりの失礼さに私が文句を言おうとしたそのとき、夫がそっと私を止めて「AIは本当に素晴らしい技術だよね。膨大な知識を一瞬で集めてくれて、僕も尊敬する優秀な相棒だよ」と穏やかに答えました。「だよね? AIは完璧だもん。おじさんの仕事みたいな単純作業とは全然違うんだよ」と勝ち誇るAくん。夫は「そうか。でもね、素晴らしいAIの知識を、誰かをバカにするために使うのか、誰かを幸せにするために使うのかを決めるのは人間なんだよ」と冷静に伝えました。
さらに夫は「1つ聞いてもいいかな? AIを信頼しているようだけど、AIに頼らず、今ここにいるみんなを笑顔にするジョークを10秒以内に作ってみてよ。目の前にいる人をどう楽しませるか、Aくん自身の頭で考えてよ」と静かに問いかけました。するとAくんは「えっと……」と言ってフリーズ。タブレットを開き検索しようとしますが、夫はそれを制し、「それじゃあ、AIの真似だね」と一蹴します。そして、固まるAくんに夫は「知識があることと、知識を活かして人の心を動かすことは、別のスキルなんだ。相手を思いやる心もなく、AIで得た知識を誰かをバカにするために使っているうちは、きみの価値はAI以下になってしまうよ」とやさしく諭すように言いました。
しばし沈黙の中、長男が「ぼくのパパはね、そのAIを作る仕事をしているんだよ。すごいでしょ!」と誇らしげに口を開きました。「えっ?」と驚くAくん。実は夫は、大手IT企業で、AIを活用したシステム開発に携わっています。しかし、無駄なマウント合戦や嫉妬に巻き込まれたくなかった夫は、波風を立てないよう近しい親戚にも「地味なデスクワークだよ」と、あえて自分を低く見せる濁し方をしていたのです。
Aくんは、見下していた相手が、実は自分が信頼してやまないAIに携わる仕事をしていると知り、顔を真っ青にして絶句しています。静かになったAくんに夫は「AIについて知りたいことがあればいつでも聞いてね。Aくんのような賢い子が、誰かを幸せにするために力を発揮するのを楽しみにしているよ」とやさしく声をかけ、その場を後にしました。
どんなに最新の技術や豊富な知識を手に入れたとしても、それを扱う人間の品性や相手を思いやる心が欠けていては意味がないと私も思います。ただ時代に合わせて賢く育てるのではなく、得た力を誰かの笑顔や幸せのために使える温かい人に育ってほしいと、わが子の将来に向けて気持ちを新たにした今回の出来事。変化の激しいこれからの時代だからこそ、親である私自身も知識の量以上に「人を思いやる心」の大切さを、日々の姿勢を通して子どもたちに伝えていきたいと思います。
著者:池田いおり/30代・ライター。12歳と6歳の活発な男の子を育てるママ。仕事と子育てに奮闘しつつも、自分の時間を何とか確保してリフレッシュしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年2月)