「おすすめをお願いします」
初デートの日、先輩が予約してくれていたのは、おしゃれなフレンチレストランでした。
普段あまり行かないようなお店に緊張しながらも、先輩の前で子どもっぽく見られたくない私は、精いっぱい余裕があるように振る舞っていました。
ところが、メニューを開いてみると、聞き慣れない料理名ばかり。
どんな料理なのかよくわからず、本当は店員さんに聞きたかったのですが、「こんなことも知らないの?」と思われたら恥ずかしい……。そう考えた私は、わかったふりをして言いました。
「おすすめをお願いします」
しばらくして料理が運ばれてくると、私は思わず固まりました。目の前に置かれたのは、私が子どものころから苦手だったトマトを丸ごと使った料理だったのです。
今さら食べられないとは言いづらく、せっかく先輩が連れてきてくれた店で料理を残すのも申し訳なく感じました。
そこで笑顔を作りながら、無理をして口へ運ぶことに。
しかし、どうしても体が受け付けません。次第に気分まで悪くなってしまい、「少しお手洗いに行ってきます」と席を立つと、そのまましばらくトイレから出られなくなってしまいました。
ようやく席へ戻ると、先輩は何も責めずに待っていてくれました。さらに、すでに会計まで済ませてくれていたのです。
せっかくの初デートを台無しにしてしまったようで申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、先輩のやさしさに救われました。
◇ ◇ ◇ ◇
この出来事以来、無理に格好をつけるよりも、わからないことは素直に聞いたほうがいいのだと学びました。当時は恥ずかしくて仕方ありませんでしたが、今ではおしゃれなフレンチレストランを見るたびに思い出す、少し苦くて笑える初デートの思い出です。
著者:広西奈々/30代女性・会社員です。好きなことは映画やアニメの鑑賞、料理、サイクリングです。
イラスト:こまつもえか
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年6月)
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