8人分の席を3人で占領する親子
昨年の大型連休のある日、私は当時3歳だった娘を連れてショッピングモールのフードコートを利用しました。お昼どきだったこともあり館内は混雑していて、席を探している人の姿も目立っていました。私も娘と席を探していたのですが、ある親子が目にとまります。
ふと見ると、小学校高学年くらいの男の子2人を連れた母親が、4人掛けの席を2つも占領し、大量の荷物を広げていました。机の上は食べ散らかした容器や空のペットボトルが放置されたままで、食べ終わっているのに片づけすらされておらず、さらに、フードコートで注文したわけではないお菓子や大量の買い物袋も、山積みになっていました。
子どもたちは靴のまま椅子の上に立ち上がり、大音量でゲームをし、ジュースをこぼしそうになりながら大はしゃぎで遊んでいます。母親はそれを注意するどころか大声での長電話に夢中で、聞こえた会話の内容から、すでに1時間以上も居座っているとわかりました。
3歳の娘はおなかが空いてぐずり始め、どうにかその親子に席を譲ってもらいたいと感じた私。「すみません、小さな子どもが待っていまして……。もしお食事がお済みでしたら、少し席を詰めていただけませんか?」と声をかけました。すると母親は私を凄まじい形相で睨みつけ、「は? 見ればわかるでしょ、まだ使ってんの! まだ注文してもないくせに譲れなんて、図々しいのよ! こっちは買い物したうえで使ってんだからね! あんたに使う権利はない! 」と猛烈に怒鳴り散らしてきたのです。突然の怒声に、娘は怯えて激しく泣き出してしまいました。
そこへ、事態に気づいた30代くらいの女性店員さんが駆けつけ、「混雑しておりますので、お食事がお済みのお客様はお席をお譲りいただけますでしょうか」とていねいに助け船を出してくれました。ところが母親は「客に向かって失礼ね! 私はこのモールの館長の親族よ。連絡一つで、あんたなんかいつでもクビにできるのよ!」と怒号を浴びせます。さらに子どもたちまでも「うっさいおばさんだ」とニヤニヤしています。見ていた私は腹立たしさでいっぱいでしたが、店員さんは動じることなく「そう言われましても、みなさん迷惑されていますので」と、冷静に説得を続けていました。
しばらくすると、50代くらいの男性店員さんが近づいて来ました。その男性は母親に、再度「混雑していますので、ご協力いただけませんか」と迫ります。その言葉に母親は一層苛立ち、「だから、言っているでしょ! 私は館長の親族なの! 本当にウザいんだから。2人ともしっかり報告するから、覚悟しといて!」となじりました。すると、男性は笑顔を浮かべます。そして「私が当館の館長です。失礼ながら、あなたのような親族は身内にひとりもおりません」と静かに告げたのです。
つまり、母親が店員を威圧するために口にした“館長の親族”という言葉は、全くのウソだったのでした。
本物の館長の登場に、母親は一瞬目が点になり、フリーズ。館長はさらに「館内での長時間のお席の占有や虚偽の発言による従業員への脅しは、業務妨害にあたります。改善いただけない場合は、警察へ通報し今後の施設利用をお断りします」と警告しました。先ほどまで強気だった母親は、もはや顔面蒼白。「そんな大げさね……」と小さな声でつぶやきながら、そそくさと荷物をまとめ、「まだ遊びたかったのに~」と不満を言う子どもたちを引きずるようにして席を離れていきました。
私は店員さんと館長さんにお礼を伝え、すっかり泣き止んだ娘に「ウソはダメだよね。みんなで使えるようにやさしい気持ちが大事だよね」と伝えたのでした。
注意されてもなお相手を攻撃し、虚偽の発言で人を威圧しようとする姿には、本当に驚き言葉を失いました。公共の場は、みんなが気持ちよく使えるようにお互いへの配慮が大切だと思います。混雑しているときこそ、自分さえよければいいという考えではなく、周囲への思いやりを持ってふるまうことが、最低限のマナーだと感じた今回の一件。子どもにもしっかりとそのことを教えていこうと改めて思ったのでした。
著者:長嶺りょう/30代・主婦。4歳の女の子を育てるママ。寝る瞬間までおしゃべりを続ける娘の横で白目を剥きながら、大好きな推しのことを考えて現実逃避中。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年5月)