息子の誕生日に、息子が食べられないケーキ…?
先日息子が3歳の誕生日を迎えました。その日は義父母の家に行き、初めて一緒に誕生日パーティーをすることに。私たち夫婦は息子といっしょに食べられるフルーツたっぷりのケーキを購入し、義父母宅へ向かいました。
パーティーは順調に進み、おもちゃを抱えて「わーい!」と大喜びする息子を中心に、場は終始なごやかでした。ただ、私にはずっと頭から離れない小さな不安がありました。それは、普段からとても口下手で寡黙な義父の存在です。何を考えているかわかりにくく、普段から少し苦手意識があった私は、失礼がないよう、粗相のないよう、内心ずっと緊張していました。
そんな中、パーティーも終盤に差し掛かります。すると、義母が「そろそろケーキを食べようか」と言った途端、さっきまで笑って息子を見ていた義父が、突然バンッと立ち上がり、眉間に深いシワを寄せたのです。あまりに険しい表情に、私は「なにか失礼なことをしてしまった?」と不安になりました。数分後、キッチンから戻ってきた義父は、手に持った白いケーキ箱を「これ」と、どこか不機嫌そうに私へ押し付けてきたのです。
おそるおそる私が箱を開けると、“誕生日おめでとう”と書かれた本格的なプレートがのったティラミスケーキが。コーヒーシロップが染み込んでいる大人向けのケーキです。「すみません、息子にティラミスは……」と困惑する私を見て、義母が「ちょっとお父さん! それは子どもが食べられないでしょ! 〇〇さん(私)たちが買ってきてくれたケーキをいただきましょうよ!」と義父を咎めました。すると義父はますますムスッとした顔になり、そのまま無言でキッチンへと戻ってしまったのです。横を見ると、夫も「え、親父どうしたの……?」と戸惑った表情で固まっています。
私は「私のせいで空気が最悪になった……」とパニックになりかけましたが、当の息子は自分用のケーキを「おいしいー!」とニコニコで頬張っており、パーティー自体は平和そのもの。しかし、私一人だけが「義父を怒らせてしまった」という重苦しいプレッシャーと胃の痛みに耐えながら、必死で明るく取り繕うことになりました。夫もどこか気まずそうに義父の様子を窺っています。
そして、勝手に重苦しさを感じたまま宴が終わり、玄関であいさつをして帰ろうとしたときです。義父はさっきのティラミスケーキを無言で再び私に渡します。私は焦って、「お、お義父さん、気持ちはすごくうれしいんですけど、息子はまだティラミスが食べられなくて……申し訳ありません!」と必死で謝罪しました。
すると義父はプイッと横を向き、「あの子の誕生日ってことは、君も母親になって3年の誕生日だろう」とぶっきらぼうに言うのです。驚く私に義母が続けて「この人ね、あなたが5年前の結婚あいさつのときに『ティラミスが好き』って言ってたのをずっと覚えてて、張り切って買ってきたのよ! でも渡すタイミングがわからなくてテンパっちゃって。さっきも私が怒っちゃったからますます意地になっちゃったのよ。ほんとごめんなさいね~!」と笑います。なんと義父は、結婚のあいさつのときに私が何気なく言った言葉をずっと覚えてくれていたのです。
あまりの予想外の真相に、今まで固まっていた夫は爆笑。「親父、それ言葉が足りなさすぎるだろ! 渡すとき怒ってるようにしか見えなかったよ!」とツッコミを入れると、義父は耳まで真っ赤にして「うるさい、さっさと持って帰れ!」と逃げるように奥へ引っ込んでしまいました。さっきまでの不安は一気に吹き飛び、義父の不器用なやさしさにとても心が温まった私。私は目に涙をためながら、奥の部屋に向かって「お義父さん、覚えていてくださってありがとうございます! 大切にいただきますね」と声をかけました。
その日の夜、私は夫と一緒に義父からもらったティラミスを味わいました。私は、不器用ながらも自分のためにケーキを選んでくれた義父を想像すると、うれしさが込み上げ、育児の疲れも吹き飛びました。
お祝いの主役の息子だけでなく、その影で3年間育児に奮闘してきた私への労いの気持ちでティラミスをプレゼントしてくれた義父。少しドキドキはしたけれど、ぶっきらぼうな態度の中に秘められた義父のやさしさと温かな視点に、私も周りの人への感謝や思いやりを忘れない人でありたいと思いました。
著者:東山なおこ/30代・主婦。車が大好きな3歳の男の子を育てるママ。いつか息子といっしょにスイーツのおいしいカフェを巡るのが夢。
作画:ryo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)