娘を狙うママ友
娘が5歳になった年に、同じクラスになったBちゃん。ふたりはとても仲がよくいつも一緒にいましたが、性格は正反対。明るく活発な娘に対し、Bちゃんはおとなしく控えめで、少し引っ込み思案な女の子でした。お迎えで会うBちゃんママも物腰が柔らかく、最初は「感じのいい人」という印象。しかし、会話を重ねるうちに、少しずつ「距離感がおかしい」と感じるようになりました。
ある日、いつもより早くお迎えに行き、私が先生にあいさつをしている間に、先に娘が廊下に出ました。すると、そこには同じく早いお迎えだったBちゃんママがおり、突然娘に強く抱きつき、「もう~娘ちゃん今日もかわいい! 大好き!」と娘の頭を強引になで回していました。娘は引きつった顔で、されるがままな状態。慌てて声をかけると「ああ! 娘ちゃんがかわいくて、つい!」と言うBちゃんママ。娘をかわいがってくれるのはうれしいと思いつつも、嫌がっている様子に気づかず強引に抱き寄せていたことはとても複雑で……。私は娘を引き離し「用事があるので帰りますね」と言うのが精いっぱいでした。帰り道、娘は「大丈夫だけど、ちょっとびっくりしちゃった……」と強がりつつも不安そうな表情です。
保育園の担任の先生にも相談し、Bちゃんママよりも早めに迎えに行けるように調整。Bちゃんママと距離をとるようになりました。
そんなある日、娘と、友だちのCちゃん親子とショッピングモールで買い物をしていると、Bちゃん親子に遭遇。Bちゃんママは駆け寄るなり「あ〜、今日も本当にかわいい!」と娘の腕を強引に引っ張り、自分の腕の中にぎゅっと抱き寄せます。そして、挙げ句の果てには「ねぇ、うちの子になろうよ? 私のことママって呼んでもいいよ!」と迫ったのです。娘の怯えた顔を見て、私が「Bちゃんママ、冗談なのかもしれないけど娘はこういうのちょっと苦手で……」とやんわり注意しましたが、Bちゃんママはなんと「せっかくかわいがってあげてるのに失礼ね! あんたより私のほうがいい母親になれるわよ!」と逆ギレしてきたのです。
私は思わず「いい加減にしてください!」とその場で叫んでしまいました。そして「人の子どもを自分の子どもかのように扱って、恐怖を与えるのは迷惑です。これ以上つきまとうなら警察に通報します!」と一喝。周囲の客からも冷ややかな視線が注がれ、Bちゃんママは口をつぐみます。
そのとき、ずっとママの横で黙っていたBちゃんが泣きそうな顔をして「ねぇママ、もうやめて……」と声をあげたのです。「ママ、いつも◯◯ちゃん(私の娘)ばっかりかわいいって言う。私、ずっと嫌だった」と寂しかった胸の内を明かしたのです。横にいたCちゃんママも「自分の子がこんなに傷ついているのに、気づかないんですか?」と言いました。
Bちゃんママのことは先生以外の誰にも相談してはいなかったものの、他のママから見てもBちゃんママの愛情のベクトルは異様に映っていたのだと、私はその場で気づきました。私は泣きじゃくるBちゃんとかがんで目線を合わせ、「Bちゃん、つらかったね。勇気を出して気持ちを言えて、すごくえらかったよ」と抱きしめました。
自分の身勝手さを突きつけられ、自分の娘からも注意されたBちゃんママは、気まずそうにBちゃんの手を引いて立ち去っていきました。
後日、この騒動は園中で噂に。園から報告を受けたBちゃんのおばあちゃん(Bちゃんママの実母)が事態を重く見て、すぐに間に入ってくれたそうです。そして、Bちゃんママは「活発で誰からも好かれる子になってほしい」という理想が強く、おとなしく感情表現が苦手なBちゃんに対し勝手に失望して、うちの娘が自分の理想に近いから異様なほどかわいがっていたようだと、あとからママ友が教えてくれました。
そして実はBちゃんママ自身も、ワンオペ育児の孤立感から精神的に限界を迎えており、自分の理想をよその子に重ねてしまうほど、深刻な状態だったそうです。おばあちゃんはそんなBちゃんママと、ワンオペの状況を改善しようしないBちゃんママの夫を厳しく叱り、Bちゃんママが専門のカウンセリングに通って自分の問題に向き合う間、Bちゃんを預かって手厚く育てることを決めたそうです。
それ以来、保育園のお迎えには温かい笑顔のおばあちゃんが来てくれるように。おばあちゃんからたくさんの愛情を注がれ、伸び伸びと過ごせるようになったBちゃんは、自分らしい笑顔を見せてくれるようになっています。
あのとき勇気を出して境界線を示したことは、わが子を守るためだけでなく、Bちゃんが救われるきっかけにもなったのだと、胸のつかえがすっととれるような思いがしました。理不尽なことから子どもを守るために毅然と拒絶する強さを持つこと、そして身勝手な理想を押し付けるのではなく、わが子の個性や性格を認めて愛してあげることの大切さを深く学んだ出来事でした。
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今回のBちゃんママのように、ワンオペ育児の孤立感や精神的な限界は、思いもよらない形で周囲に影響を及ぼすこともあります。こうした状況を防ぐためにも、パートナーや家族と、育児をともに担っていくことが大切ですよね。
そして、自治体の子育て支援センターや保健師への相談、産後ケアサービスの利用など、使えるサポートを積極的に活用することも助けになります。精神的につらいと感じたときは、かかりつけ医や地域の心の健康相談窓口に相談することも選択肢のひとつです。「助けを求めること」は決して弱さではなく、自分と子どもを守るための大切な一歩です。
Bちゃんママのように自分の理想をわが子に投影してしまうことは、誰にでも起こりうることかもしれません。子どもはそれぞれ異なる個性を持っています。わが子が自分の思い描く姿と違っていても、その子らしさをそのまま認めて愛することが、子どもの自己肯定感を育てていくうえでとても大切なことではないでしょうか。
著者:西村あかり/30代・パート。6歳の長女と5歳の長男の年子きょうだいをもつ母。メリハリボディに憧れるが、5年経った今でも産後ダイエット継続中。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)