耳を疑う要求をされ…
当日になり、無事に指定席に座った私たち。すると次の駅で窓際の席に男性が座りました。娘は静かにしていたし、特に心配事もなく過ごしていたのですが、しばらくすると別の車両から知らない男性が歩いてきて、私に突然声をかけてきたのです。
その男性は「すみません、席を代わってもらえませんか?」と言います。理由を尋ねると、娘の隣に座っている男性が友人で、隣同士で座りたいから、とのことでした。どうやらその男性が予約したときには2人並んで座れる席は空いていなかったようです。気持ちはわからなくもないのですが、もし席を交換したら、私と娘は別々の車両で過ごすことになってしまうので、まさかの理由に思わず絶句。
私は「申し訳ありませんが、子どもと離れてしまうので難しいです」とていねいに断りました。するとその男性は「え、お子さんもう大きいし、別々に座っても大丈夫じゃないですか?」とさらに言ってきたので、驚きました。年齢の割には落ち着いているので平気だと思われたのかもしれませんが、まだ5歳の子と別々の車両に離れて座るなんて、親として考えられませんでした。
「まだ5歳なので、ひとりで座らせるわけにはいきません」と再度きっぱりお伝えすると、男性は「でも5歳なら一車両くらい離れても大丈夫じゃないですか? そんなに難しい話じゃないと思うんですけど」とさらにごねてきます。困り果てていると、隣に座って寝ていた窓際の男性が、突然口を開きました。
「いやいや、お前さぁ、予約するのが遅すぎて隣同士が取れなかった俺たちが悪いし、こんな小さな子をお母さんと離れ離れにしてひとりで座らせてまで、俺たちが並んで座るのはおかしいだろ。指定席の交換なんてしていいわけないし、常識を考えろよ。おとなしく自分の席に戻ってろ。まったく……。降りてからたくさん話そうぜ」と友人に向かってはっきり言ったのです。
男性は「……わかった」「あの、すみませんでした」と謝り、しぶしぶ自分の席へ戻っていきました。その後、窓際の男性が私に向かって「すみません、寝てて気づかず……。さっきのやつ、仲いい友だちなんですけど、あんまり深く考えず思いつきで行動するくせがあって。迷惑かけてすみません。気にせず親子でゆっくりしてください」とやさしく声をかけてくれたのです。思いがけない言葉にほっとすると同時に、温かい気持ちになりました。
この出来事を通じて、理不尽な要求に対してはハッキリと「NO」と伝えることの大切さを実感しました。そして、自分たちだけでの解決が難しい場合は、車掌さんなどのスタッフに任せたほうがよかったかもしれないと思いました。
そして、今回の窓際の男性のように、親しい間柄であっても、相手が間違ったことをしているときにきちんと指摘できるのは、本当に素敵なことだと思いました。身近な人には言いにくくて我慢してしまうことも多いですが、自分もそういう人でありたいと感じた旅の思い出でした。
著者:加賀美 あやか/30代女性・会社員
5歳の娘を育てる母。仕事と子育ての両立を頑張っている。家族と出かける休日がいつも楽しみ。
作画:さくら
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年8月)
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