「俺は社長の息子だぞ」
彼は通常の採用選考を経て入社し、僕と同じ営業部に配属された新人でした。
周囲に人がいるときは真面目に振る舞っていましたが、僕と2人きりになると態度が一変します。
ある日、彼は自分が担当する書類を僕のデスクに積み上げ、高飛車に言い放ちました。
「これやっといて。今日中にできなきゃクビなw」
突然仕事を押し付けられ、僕が困惑していると、彼はニヤリと笑いました。
「みんなには言ってないけど、実は俺……社長の息子なんだよね」
僕は社長の家族構成を知りませんでしたが、確かに彼は社長と同じ苗字でした。
「社長の息子なら、逆らったら本当にクビにされるかもしれない」
そう思うと怖くなり、彼の仕事まで引き受けてしまったのです。
彼は僕に仕事を押し付けると、自分はスマホばかりいじっていました。
それからも、人目のないところを狙って僕に雑用を押し付けるようになりました。
「使えないな」「俺に逆らったら、いつでもクビにできるぞ」
僕が強く言い返せないのをいいことに、彼の暴言は日に日にエスカレートしていきます。
やがて仕事の押し付けによって本来の業務にも支障が出始め、僕はついに限界を迎えました。
このまま黙っていてはいけないと思い、直属の上司にすべてを打ち明けたのです。

社長室で明かされた事実
僕の話を聞いた上司は驚き、すぐに人事部へ報告しました。
その後、上司と人事担当者に付き添われ、社長本人にも事情を説明することになったのです。
僕は緊張しながら切り出しました。
「あの……息子さんから、毎日クビにすると言われています。それに、彼の仕事まで押し付けられていて……」
すると、僕の話を聞いていた社長は、不思議そうに首を傾げました。
「ん? うちには娘が3人だけだが?」
その言葉に、僕は思わず耳を疑いました。
社長はなにか事情を知らないか確認するため、社内で働いている自分の娘たちをその場に呼びました。しばらくして社長室に入ってきたのは、いつも親身に接してくれる3人の女性社員でした。
実は、この3人の女性社員こそが社長の娘だったのです。
社長に息子など、最初からいませんでした。
暴かれた嘘の結末
会社はすぐに、本人や周囲の社員への聞き取りを始めました。
調査の結果、彼と社長には何の血縁関係もないことが判明しました。
彼は、たまたま社長と同じ苗字だったことを利用し、僕にだけ「自分は社長の息子だ」と嘘をついていたのです。
上司や先輩社員の前では真面目な新人を装い、気が弱くて言い返せない僕を狙って、仕事を押し付けていました。
呼び出された彼は、社長と3人の娘を前にして顔面蒼白になりました。
社長から問いただされると、最初は言い訳を並べていましたが、やがて観念しました。
「社長の息子だと言えば、逆らわれないと思った」
あまりにも身勝手な理由に、その場にいた全員が呆れてしまいました。
会社は、仕事の押し付けや暴言について、社内規定に基づいて正式な処分を検討すると本人に告げました。
その後、彼は自ら退職届を提出。必要な手続きを終えた後、会社を去っていきました。
僕の職場には、ようやく平穏な日々が戻りました。
今回の件をきっかけに、何かあれば早めに周囲へ相談することの大切さを実感しました。今では安心して仕事に打ち込んでいます。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。