備えを軽視するママ友が直面した現実
これは、息子が生後5カ月のときのお話です。子育てをする中で、防災対策の大切さに気づいた私は、子どものためにも水や備品の備蓄を始めていました。
そんなある日、夫が出張でいないタイミングで、同じマンションで仲良くなったママ友たちを招き、お泊まり会をすることに。集まったのはAさん、Bさん、Cさんとその子どもたち。協力しながら育児と家事をこなし、賑やかで楽しい時間を過ごしていました。
すると夜間授乳の合間、Bさんが「ねぇ、そういえば備蓄してるんでしょう? たしかに最近、地震が多いもんね」と聞いてきました。私が頷くと、Aさんも「私も最低限だけどしているよ」と同調します。私は「子どもの身の回りのものとか、万が一を考えると怖くて。だから備えるようになったの」と説明しました。
しかし、やり取りを聞いていたCさんが、「え~なんかさ、備蓄備蓄って騒ぎすぎじゃない? あなたたちみたいな人がいるから、お店から物がなくなるんじゃないの?」と言い放ったのです。私は驚いて「買い占めはしてないし、ローリングストックや非常食を少しずつ用意してるだけだよ」と伝えましたが、Cさんは止まりません。「備蓄なんて場所の無駄。必要なときだけコンビニへ行くってほうが世のためだと思うけど。心配しすぎて滑稽だよ」と鼻で笑います。なぜか私が責められている空気になり、AさんやBさんがフォローしてくれても、Cさんはバカにするような態度を変えませんでした。
モヤモヤしたまま眠りにつき、迎えた翌朝。それぞれが帰宅の準備をしていたときのことです。突然、緊急地震速報の警報音に続き、マンションがガタガタと大きく揺れました。幸いけが人や室内の大きな被害はありませんでしたが、運悪くマンションの受水槽が故障し、全館断水という事態に。
「水が出ない! どうしよう!」とパニックになったのは、昨夜あんなに余裕たっぷりだったCさんでした。Cさんは、ちょうど子どものおむつを替えており、地震で手に汚れがついてしまっています。さらに「おしり拭きがもうない! しかも家に育児用ミルクを作るための水もない!」と焦っています。外は土砂降りで、買い物も危険な状況です。
するとCさんは、突然強い目つきで私をにらみつけ、「ねえ、あなた備蓄してるんでしょう!? だったら少しくらい分けなさいよ! 友だちなんだから助け合うのが当然でしょ!?」と言い放ちました。
昨夜の態度からは一転、居直って備蓄をよこすよう詰め寄ってくるCさんに、私は言葉を失いました。すると、様子を見ていたAさんとBさんがすかさず「ちょっとCさん、都合が良すぎない? 昨日あれだけ『無駄だ』『滑稽だ』ってバカにしておいて、困ったらタカるなんておかしいよ!」「そうだよ。昨日あれだけ備蓄を否定していたのに、○○さん(私)に当然のように要求するのは違うんじゃない?」と間に割って入ってくれました。
友人たちから厳しく指摘され、Cさんはぐうの音も出ず、顔を赤くして立ち尽くしてしまいました。手は汚れ、ミルクも作れず、泣き続ける赤ちゃんを前に、今にも泣き出しそうなCさん。私は黙ってクローゼットへ行き、保存水と未開封のおしり拭き、使い捨て哺乳びんを取り出しました。そして、それらをCさんの前に置き、「これを使って」と言いました。続けて、静かに、しかしハッキリとした口調で「でもねCさん……これは『みんなに分けるための備蓄』じゃないよ。私が『もしものときに家族が困らないように』って用意してきた大切なものなの。今回は赤ちゃんに罪はないから渡すけど、他人の備えをアテにして、強引にもらおうとするのは違うと思うよ」と話します。
ハッとしたCさんは青ざめながら気まずそうに目を伏せ、震える声で「……ごめんなさい。本当に……ありがとう」と深く頭を下げて受け取りました。その後、無事に赤ちゃんのお世話を終えたCさんは、何度も何度も謝罪と感謝を口にしていました。夕方、みんなを見送る際、Cさんは「私、帰ったらすぐわが家の備蓄を始めるよ……」と反省した面持ちで帰っていきました。今ではCさんもすっかり防災意識の高いママになり、良い友人関係が続いています。
災害はいつ起こるかわかりません。どのくらい備えるか、何を備えるのかは各家庭の考えによって異なるものだとは思いますが、家族のことを思っての備えや考えまでを否定したりバカにしたりするのは間違っていると私は思います。今回の出来事を通じて、周囲の意見に惑わされることなく、自分が正しいと思うことを続ける大切さを改めて実感しました。これからも家族を守るための備えを、自分らしく続けていこうと心に決めています。
著者:立川りか/ライター。7歳の男の子を育てるママ。息子の好きを全力で応援するため日々奮闘中。虫が大の苦手だが、息子の虫取りに付き合ってきたおかげで少しだけ耐性がついてきた。食後のデザートや週末の晩酌がご褒美。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)