焼肉なのに、私だけ食べられない
1歳になったばかりの娘を連れて、夫、義両親、私の5人で焼肉食べ放題に行きました。久しぶりの外食で、娘も機嫌がよかったので、「今日はゆっくり食べられるかもしれない」と期待していました。
しかし、お店に到着して数分後、娘がぐずり始めました。私は娘を抱っこして席に着きましたが、そこからはずっと娘のお世話が続きました。お店に確認したうえで持参した離乳食を食べさせようとしても、娘は嫌がってなかなか食べてくれません。その後は、麦茶を飲ませたり、ぐずる娘をあやしたりすることの繰り返しでした。
隣では、夫がおいしそうに上カルビを食べていました。夫が肉を焼いてくれるのはありがたかったのですが、私は娘のお世話で手が離せず、焼けたお肉を食べることができませんでした。お茶を飲むのが精いっぱいだったのです。一方、義両親は焼肉やお酒を楽しみながら、おしゃべりに花を咲かせていました。私は一人だけ別の場所にいるような気分でした。
誰かが「少し代わるから食べたら?」と言ってくれないかな、と心の中で期待していました。でも、自分から「代わってほしい」とは言い出せませんでした。その場の空気を壊したくなかったですし、娘のお世話は自分の役目だと思い込んでいたからです。
結局、1時間ほどの間に口にできたのは、お茶を数口だけでした。おなかはすいているのに、お肉を前にして何も食べられないのは、思っていた以上にこたえました。
お店を出て義両親と別れたあと、私は黙ったまま歩いていました。食事中に感じたことを夫に伝えようか、迷っていたのです。食べ物のことで文句を言うなんて、食い意地が張っているみたいで恥ずかしい気がしました。でも、このまま黙っていたら、モヤモヤしたものがずっと残ってしまいそう……。そう思い、「今日、私ほとんど何も食べられなかったんだよね」と口に出しました。声が少し小さくなってしまったのを覚えています。
夫は少し驚いた顔で、「え、そうだったの? 気づかなかった。ごめん」と言いました。言い訳をされるかと身構えていた私は、拍子抜けするくらいすんなり謝ってもらえて、肩の力が抜けた気がしました。そのあとすぐに、「次からは交代で娘を見よう。先に食べていいよ」とも言ってくれたのです。
夫は、私がほとんど食べられていないことに気づいていなかったようです。私も「察してほしい」と思うばかりで、自分の気持ちを伝えられずにいました。
あの日から、小さな子どもを連れて外食している人を見かけると、つい様子が気になるようになりました。あのとき私が本当に欲しかったのは、豪華な料理ではなく、「ちゃんと食べてる?」と気にかけてもらうことだったのだと思います。
今は、家族で出かけるときに「今日は私が先に食べるね」「次は交代ね」と、自分から声に出すようにしています。言ってみると、思っていたよりずっとラクでした。あの日は結局、焼肉を一口も食べられませんでした。それでも、自分の気持ちを遠慮せずに伝えることの大切さを学ぶきっかけになりました。
著者:田中咲子/30代女性/現在は夫と2歳、5歳、7歳の子どもと暮らす専業主婦。義両親、実両親とは離れて暮らしています
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年9月)
※AI生成画像を使用しています
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