マイホームにダメ出しをしてくる義姉
義姉は数年前にこだわり抜いた注文住宅を建てており、家づくりの大先輩を自負していました。子どもがいない義姉は、甥である私の息子のことを目に入れても痛くないというほど溺愛してくれていたのですが、昔からとにかくお節介で、他人の領域にズカズカ踏み込んでは自分の価値観を押し付ける性格。弟である夫に対して「センスのないあんたたちのために、成功者である私がいろいろ教えてあげる」と、完全に上から目線の親切心を暴走させていたのです。
ある日、新居のお祝いを持って訪ねてきた義姉は、玄関に入るなり私たちの家を品定めするように見回し、さっそく「床材は〇〇にしなかったの? 安っぽく見えるわね」「うちをお願いした設計士さんなら絶対にこんな間取りにしないわ。なんでトイレがここなの? 動線が悪くて使いづらそう」と自分の家と比較しては次々とダメ出しを繰り返します。
さらに、手つかずの庭を見て「外構はどうするの? まさかこのまま放置?」と聞いてきたため、夫が「予算のこともあるし、少し資金を貯めてからじっくり自分たちのペースで整える計画なんだ」と伝えました。しかし義姉は「はぁ? 新築なのに庭が土のままなんてみっともない!」と小馬鹿にして鼻で笑ったのです。私たちは内心うんざりしたものの、息子を心からかわいがってくれる義姉と波風を立てたくない思いもあり、その場は聞き流すしかありませんでした。
やがて、新居に住み始めて1カ月ほど経った休日のことです。突然インターホンが鳴りドアを開けると、そこには見知らぬ作業服姿の男性と得意げな顔をした義姉が立っていました。驚く私たちをよそに、「今日、何も予定ないわよね? 私の家の庭を手掛けてくれた腕利きの外構業者さんを連れてきてあげたわよ!」と信じられないことを言い出した義姉。
「資金が貯まるまで後回しにする」とあれほど伝えてあったにもかかわらず、義姉にはまったく響いていませんでした。当然、外構業者さんは家主である私たちの同意も契約もない状態で勝手に工事を進めることなどできません。しかし義姉は、建築前の相談用として義実家に預けてあったわが家の敷地図面の予備を勝手に持ち出し、外構業者さんに「施主である弟夫婦の代わりに私が窓口になって進めている」と嘘の説明をして、現地調査と見積もりのための採寸アポを勝手に入れて連れてきてしまったのでした。
外構業者さんも「本日は施主様立ち会いでの初回現地確認とヒアリングだと伺っていたのですが……」と気まずそうに困惑しています。これには普段温厚な夫も、堪忍袋の緒が切れました。
夫が「外構は自分たちでお金を貯めてからするって言っただろ! もう我慢の限界だ! いい加減にしてくれ!」と怒鳴りましたが、義姉は悪びれるどころか「はぁ? お金が貯まるのを何年も待つつもり!? まとまったお金がないなら分割で払えばいいだけでしょ! そんな簡単なことも頭にないわけ? あんたたちが無知でお金の使い方もヘタだから、大先輩の私が手取り足取り段取りしてあげたんじゃないの!」と心底あきれたように言い放ちました。
ローンを組めばいいと勝手に決めつけ、他人の家計にまで土足で踏み込んでくるような義姉に私も我慢できず「自分たちの家です。自分たちで納得できるように決めますから、お引き取りください!」と言うも、義姉は「せっかくの手助けを無駄にする気!?」と一歩も引きません。
どうやって退散してもらおうか必死に考えていると、玄関先で響く怒声に怯え、リビングにいた息子がついに泣き出してしまいました。そしておもちゃの剣をぎゅっと握りしめて玄関へ駆け寄ると、「パパとママをいじめないで! おうちが壊れちゃう! ぼくのお家に来ないで!」と涙をポロポロこぼしながら叫んだのです。どうやら息子は、玄関先で大人たちが言い合う様子を陰から見ていて、「おうちが壊れちゃう」と怖くなったようでした。
大好きな息子から思いがけず拒絶され、義姉の顔は真っ青に。そしてそんな息子の姿を見た外構業者の男性は、すっと表情を硬くします。どうやら、深刻さを察したようです。そして息子の目線に合わせて表情を崩し「ぼく、怖がらせてごめんね」とやさしく声をかけました。そして立ち上がると、義姉に向かって「奥さん、こんな小さな子どもを怯えさせ、泣き叫ばせてまで無理やり押し通すような工事を、うちが引き受けるとでも思ったんですか? ご家族が誰も望んでいないどころか、傷つけてまで作る庭なんて何の価値もありませんよ。今日の私たちの時間と、このご家族の暮らしを一体何だと思っているんですか。今回の現地出張費は、手配されたあなた個人に全額ご請求させていただきます」と冷ややかに言い放ちました。
幸い正式な工事契約には至っておらず、工事のキャンセル料などは発生しませんでしたが、業者さんへの出張料やお詫びのための菓子折り代などは、すべて義姉が自腹で支払う羽目になりました。
その後、義姉は自分の正当性を訴えようと実家の両親に泣きついたそうですが、「お前は何様なんだ! 弟夫婦の暮らしに土足で踏み込むんじゃない!」と両親からこっぴどく雷を落とされたとのこと。その数日後、青ざめた義姉が再びわが家を訪ねてきました。玄関先で深く頭を下げ、「完全に私の思い上がりでした」と謝罪。そして、両手いっぱいに抱えてきた息子の大好きなお菓子を差し出しながら、「〇〇ちゃん(息子)、本当にごめんね……もうパパとママを怒鳴ったりしないから、おばちゃんのこと嫌いにならないで……」と半泣きで必死に機嫌を取ろうとしていたのです。息子は「もう怒ったらいやだからね」と釘を刺していて、私も義姉の小さくなった姿に、ようやく憑き物が落ちたのだと実感しました。
それ以来、義姉がわが家の暮らしや好みに口を挟んでくることは一切なくなりました。息子に嫌われたくない一心で、今では適度な距離を保ちながら、純粋にかわいがってくれる「ちょうどいい距離感の伯母さん」になってくれています。どれほど身近な親族であっても、お互いの領域を尊重し、踏み込みすぎない関係を保とうと心に決めた出来事でした。
著者:須藤和香/30代・パート。甘えん坊な6歳の息子と自由気ままな4歳の娘、自分の時間を優先する夫に振り回されているパートママ。北欧風ルームツアーや庭づくり動画を見るのが最近の楽しみ。
作画:けだま
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)